公開日 2024.2.26
重症のうつ病では幻覚や妄想が生じることがあり、精神病性うつ病と呼ばれています。
一般に通常のうつ病治療より強化した薬物治療が必要となります。
その一方で、精神病性うつ病に対する薬物治療の有効性を比較検討した、十分な科学的根拠は存在していませんでした1)。
今回、2024年3月号のLancet Psychiatryに、初の精神病性うつ病に対する薬物治療の有効性と安全性の比較の解析結果が掲載されました2)。
治療薬の直接比較では、奏功率で以下の順に有効性が認められました。
有効性と忍容性を併せて比較すると以下の図1の結果でした。
寛解率ではフルオキセチン+オランザピンが優れていました。
フルボキサミン(医薬品名:ルボックス・デプロメール)、イミプラミン(医薬品名:トフラニール)、ミルタザピン(医薬品名:リフレックス・レメロン)、ベンラファキシン(医薬品名:イフェクサー)、およびベンラファキシンとクエチアピン(医薬品名:セロクエル)の併用を比較したサブ解析では、ベンラファキシンとクエチアピン、イミプラミンの有効性が高い結果でした。
有効性と忍容性を併せて比較すると以下の図2の結果でした。
薬剤クラスによる直接比較では、奏功率で以下の順に有効性が認められました(図3)。
寛解率ではSSRI+第2世代抗精神病薬が優れていました。
治療薬の比較では、寛解率でフルオキセチン+オランザピンが優れており、奏功率の比較で忍容性が優れている結果でした。
また、薬剤クラスによる比較では、寛解率でSSRI+第2世代抗精神病薬が優れおり、忍容性はプラセボと同程度でした。
これらの結果から、精神病性うつ病ではSSRI+第2世代抗精神病薬が望ましい選択肢であり、特にフルオキセチン+オランザピンが最適であると著者らは述べています。
日本ではフルオキセチンは未承認のため、その他のSSRIにオランザピンを組み合わせることで代替可能であると考えられます。
以下の3つの組み合わせが今回の研究からは有効であると考えられます。
しかし、ベンラファキシン+クエチアピン、アミトリプチリン+ペルフェナジンは忍容性が低い結果であったため、慎重な使用が必要と言えます。
精神病性うつ病に対する明確な薬剤選択の科学的根拠がなかった中で、今回の研究は一定の指標を与えるものになりました。