高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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女性のうつ、不調と「フェリチン」

公開日 2020.11.12

フェリチンは体内で鉄と結合し、鉄を蓄えておく役割があるタンパク質です。

鉄は喜びの感情ややる気にかかわるドパミンの生成に必要な成分であることがわかっており 1)、鉄の貯蔵庫であるフェリチンの低下はうつ病に関与することが報告されています 2)。

また女性の疲労やイライラ感にも関わることが報告されています 3)。

産後うつ病においても重要な因子の一つとなります 4)。

女性の精神的不調では主に女性ホルモンの変化(エストロゲンの変化)とセロトニン伝達の不調が、体の要因として語られることが多いですが、体内の鉄分、フェリチンも大きな要素の一つです。

女性は月経があること、子宮内膜症などの婦人科系疾患で出血量が増加することがあり、気づかぬうちに鉄、フェリチンの低下が進んでいることがあります。

その他にもダイエットや過度の運動が関わっている原因となっている場合もあります 5)。

一般に貧血は健康診断の赤血球症、ヘモグロビン値(Hb)の低下がなければ問題ないと判断されますが、実際の診療の現場では赤血球症、ヘモグロビン値(Hb値)が正常範囲でも鉄、フェリチン値の低下が見られることがあります。

そのため、健康診断で異常なしの判定でも不調ある場合はその背景に鉄、フェリチンの低下がある場合があります。

上記のような月経や子宮器疾患で鉄、フェリチン値の低下があると、うつ状態でうつ病と診断を受けて抗うつ薬だけで治療を受けてもなかなか良くならないということが起こります。

この場合、鉄剤による治療を並行して行うことで症状が早く改善することがあります。

産後うつにおいても早期の鉄剤治療が有効であることが報告されています 6)。

鉄、フェリチン低下で疲れやすい状態では家庭の中で家事、育児の負担が大きく、結果としてうつにつながることがあります。

また、精神的な余裕も低下してしまうのでイライラ感も増してしまいます。

働いている女性では職場での勤務の負荷が大きくなり同様です。

疲労、倦怠感においても鉄剤の治療が有効であると報告されています 7)、8)。

以上のように女性のうつ、不調の原因にフェリチンの低下があることがあります。その場合、鉄剤による治療を行うことが有効です。

文献

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執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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