高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

高津心音メンタルクリニック 心療内科・精神科 川崎市 溝の口

「亜鉛」とうつと健康

公開日 2020.11.16

亜鉛は微量元素として人体の中に分布しており、様々な役割を担っています。

亜鉛の値の低さとうつ病が関連していることが示されています 1)。

また、慢性疲労の原因にもなります 2)。

うつ病で亜鉛の値が低い場合、亜鉛を補充するとうつ症状の改善に有効であることが示されています 3)。

また、抗うつ薬と亜鉛を併用すると抗うつ薬のみの治療よりも有効である報告があります 4)(図1)。

図1

亜鉛の抗うつ作用は①脳内の神経の維持や神経間の働きに関わりタンパク質の産生に関わる作用(BDNF産生作用)、②炎症を抑える作用(抗炎症作用)、③シナプスにあるグルタミン酸受容体というものの一つであるNMDA受容体の伝達を抑える作用(NMDA受容体拮抗作用)と想定されています 5)。

③のNMDA受容体拮抗作用は強迫性障害でも有用であるため、強迫性障害で亜鉛が低値の場合はうつ病と同様に亜鉛補充が有効との報告があります 6)。

亜鉛が低値になるとそれを機に鉄欠乏性貧血が悪化することがあり 7)、亜鉛低値と鉄、フェリチン低下という2重の体内成分欠乏によるうつ、不調をきたすリスクがあります。

近年は不規則な食事やインスタント食品の影響などで亜鉛の値が低いという結果が多く見られます。

亜鉛低値では褥瘡(床ずれ)にもなりやすく 8)、褥瘡が続く場合、体位交換、塗り薬だけでなく亜鉛補充が効果的です 9)。

褥瘡(床ずれ)になりやすいということは、亜鉛が皮膚の再生、構造に関わっているとうことでもあります 10)。

精神的に不調である時、「顔色が悪い、お肌の状態が悪くなった」ということがあるかもしれませんが、このような状態が背景にあることがあります。

また、2020年11月時点での新型コロナウイルスと亜鉛の関係では、感染者では亜鉛の値が低かったこと、及び合併症、死亡率が高かったことが報告されています 11)(図2)。

図2

そのため、新型コロナウイルスの予防のために亜鉛を正常に保つことは、まだ臨床試験では初期段階であるものの肺炎や一部のウイルス感染症を低下させることが知られており、有用性が示唆されています 12)、13)。

【文献】

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執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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