高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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ベンラファキシン(イフェクサーSR)について

公開日 2022.8.22

作用・特徴

ベンラファキシン(イフェクサーSR)は日本で3剤目となるSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)という抗うつ薬に分類される薬です。

日本ではデュロキセチン(サインバルタ)が先に承認・発売されましたが、米国をはじめ海外ではデュロキセチンより前に承認・発売されすでに長く使用されています。

ミルナシプラン(トレドミン)、デュロキセチン(サインバルタ)と異なり、低用量ではセロトニン再取り込み阻害作用が強く(セロトニンの量を増やし)、用量をあげていくとノルアドレナリン再取り込み阻害作用が強くなっていきます(ノルアドレナリンの量を増やします)1)、(図1)。

また、弱いドパミン再取り込み阻害作用も有しています2)。

図1 ベンラファキシン(イフェクサー)の作用

効能・効果

日本での保険承認は現在(2022年8月時点)、「うつ病・うつ状態」となっています。

米国、英国ではうつ病の他に「パニック障害」、「社交不安障害」、「全般性不安障害」の承認を得ており不安障害にも使用されています(図2)。

図2 ベンラファキシン(イフェクサー)の各国の保険適応

用法・用量

通常、成人にはベンラファキシンとして1日37.5mgを初期用量とし、 1週後より1日75mgを1日1回食後に経口投与する。

なお、年齢、症状に応じ1日225mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として75mgずつ行うこととなっています(図3)。

図3 ベンラファキシン(イフェクサー)の投与方法

薬物動態

内服後、肝臓で代謝され薬理活性(薬としての効果)を有するO-脱メチルベンラファキシン(ODV)が産生されます(図4)。

ODVはデスベンラファキシン(プリスティーク)として2008年に米国で抗うつ薬として承認されています。

未変化体のベンラファキシンとデスベンラファキシンが血液中を循環し、脳へ移行します。

図4 ベンラファキシン(イフェクサー)とデスベンラファキシン(ODV)の化学構造式

1日1回単回で内服した際は血液中の濃度は約6時間で最高濃度に達し、約8~9時間後に血液中の濃度は半分に下がります(図5)

図5 ベンラファキシン(イフェクサー)1回内服時の血中濃度の推移

毎日内服すると、血液中の濃度は約6時間で最高濃度に達し、3日程で一定の濃度に維持されます(図6)。

食事による影響はありません。

図6 ベンラファキシン(イフェクサー)を毎日内服した時の血中濃度の推移

女性は男性と比較し、高齢者は若年者と比較し血中濃度が高くなることが報告されており、性別、年齢を考慮した用量設定が必要になります3)、4)、(図7)。

図7 性別・年齢によるベンラファキシンの血中濃度の差

剤型

剤型には37.5mgカプセルと75mgカプセルがあります。

副作用

国内臨床試験では1225例中1028例(81.9%)に副作用発現を認め、主なものは悪心33.5%、腹部不快感27.2%、傾眠26.9%。浮動性めまい24.4%、口内乾燥24.3%、頭痛19.3%、動悸13.2%、肝機能検査値異常10.0%でした(図8)。

図8 ベンラファキシン(イフェクサー)の主な副作用

メンタル面ではデュロキセチン(サインバルタ)同様ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を介した躁転に注意が必要です5)、6)、(図9)。

身体面では上記副作用以外にノルアドレナリンの影響による血圧上昇、頻脈に注意が必要です。

図9 ベンラファキシン(イフェクサー)の躁転のリスク

副作用で頭痛が生じることがある一方、抗うつ薬の中で三環系抗うつ薬のアミトリプチリン(トリプタノール)と並び片頭痛の予防効果があり7)、2021年に改訂された日本神経学会の頭痛診療ガイドラインでは記載されなかったものの、米国頭痛学会のガイドラインでは以前から記載されています8)。

2021年に米国頭痛学会は片頭痛発作時治療、予防治療の合意声明を出し、その中でベンラファキシン(イフェクサー)はあらためて予防治療としてprobably effective(有効である可能性が高い)として記載されました9)、(図10)。

図10 米国頭痛学会コンセンサスステイトメント2021 片頭痛予防薬物治療

アミトリプチリンと効果は同等であるも、アミトリプチリンより副作用が少なく、優先される選択肢であるとする研究も報告されています10)。

意欲低下や不安症状とともに身体疾患の背景も考慮し、性別・年齢で用量を調整し、慎重に使用します。

文献

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執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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