公開日 2022.9.1
小児・青年に対する抗うつ薬の十分なエビデンスは従来整っておらず、米国では8歳以上対しフルオキセチンが、12歳以上に対しエスシタロプラムが承認されています。
一方日本では小児・青年に対する抗うつ薬の承認はなく、使用においてはどの抗うつ薬を用いるか個々の医師が慎重に決定しています。
上記のように十分なエビデンスが不十分な状況でしたが、2020年にZhou Xらが小児・青年のうつ病に対する抗うつ薬及び心理療法の有効性と忍容性に対する比較の解析を報告しました1)、(図1)。
その中でやはり米国で保険承認を得ているフルオキセチンが有効性と忍容性が優れている結果でした。
ミルタザピン(リフレックス・レメロン)、ベンラファキシン(イフェクサーSR)、デュロキセチン(サインバルタ)も有効性と忍容性が優れている結果でした。
しかし、ベンラファキシン(イフェクサーSR)は自殺のリスクが他の抗うつ薬より高かったという解析結果も同時に報告されています1)、(図2)。
2021年にHetrick SEらは新たに小児・成人に対する抗うつ薬の効果の解析を行い、セルトラリン(ジェイゾロフト)、デュロキセチン(サインバルタ)、フルオキセチン、エスシタロプラムがやや優勢であったことを報告しています。
Zhou Xらの解析と同じく、ベンラファキシン(イフェクサーSR)は自殺リスクがオッズ比13.84(p=0.03)と高かったことを報告しています2)。
これらの結果から、著者らはフルオキセチンと並んでセルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム、デュロキセチン(サインバルタ)が第一選択肢として検討されるとしています。
日本ではフルオキセチンは未承認であるため、小児・青年のうつ病に対する抗うつ薬の選択では、セルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム、デュロキセチン(サインバルタ)が第一選択肢になると考慮されます。
また、ベンラファキシン(イフェクサーSR)を使用する際には自殺のリスクに十分注意する必要があります。
なおZhou Xらの報告では、心理療法では対人関係療法と問題解決療法が有効性と忍容性で優れている結果でした2)、(図4)。
心理的な援助や学校との連携といった包括的アプローチを基本に、薬物治療も検討されます。
学校でのいじめがうつ病の原因であれば、一旦休学するなどの環境調整、周囲の理解ある対応などが最優先になります。
夏休み明けは日本では学童の自殺率が増加することがわかっており、様子がおかしいと感じれば無理に学校には行かせず、休ませて本人が悩みを話せる環境を作ってあげて頂きたいと思います。