高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

高津心音メンタルクリニック 心療内科・精神科 川崎市 溝の口

社交不安障害について

公開日 2020.6.12

症状

社交不安障害は他人に見られる社交の場で不安、恐怖が生じます。

社交場面は雑談すること、食事をするところを見られること、他人の前で話しをすることなどが含まれます。

また、このような場面で自分が他人にどのように思われるのかを不安に感じたり、他人から否定的な評価を受けるのではないかと不安や恐れを抱き、社交場面を避けたり、その場にいることに苦痛を感じます。

従来、日本では他人と同席する場で不安、緊張が生じ、そのため他人に不快な思いをさせるのではないか、軽蔑されるのではないかと考え、対人関係から回避する対人恐怖症という疾患が定義され、診断に使用されていました。

現在、対人恐怖症とアメリカ精神医学界が定義する社交不安障害はおおむね一致する診断概念として日本でも社交不安障害が診断名として使用されています。

従来の対人恐怖症には以下のような症状による分類があり1)、同じ患者さんでも複数の症状を併せ持っていることがあります。

対人場面による症状分類

不安に伴う身体症状による症状分類

有病率・遺伝率

国内での有病率は1.8%、米校では12.1%と報告されています2)、3)。

遺伝率は28%と報告されています4)(遺伝の素因が引き継がれる確立が28%ということで、28%の確立で発症するといことではありません)。

病因・病態

気質要因として行動抑制(慢性的に新しい人、場所、物を警戒したり、回避する傾向)が挙げられています5)。

環境要因としては幼少期のトラウマ体験が挙げられています6)。

生物学的病態として不安な状況での脳の扁桃体、島の活動性亢進が報告されています 7)、(図1)。

(図1)

また近年の画像研究ではセロトニンとドパミンの機能障害が報告されています8)、(図2)、(図3)。

(図2)

(図3)

併存症

社交不安障害はうつ病、アルコール使用障害、不安障害の併存が多いことが報告されています9)、(図4)。

(図4)

症状による機会損失

社交不安障害は受診率が低く、QOLの低下を伴う様々な人生上での影響が指摘されています10)、11)、(図5)。

(図5)

治療

治療は薬物療法と精神療法が行われます。

薬物療法ではSSRIという脳内でのセロトニンの作用の働きを強める薬を使用します。

必要に応じてベンゾジアゼピンという抗不安薬の併用を行います。

精神療法では認知行動療法が有効であることが分かっています。

治療には時間がかかるため根気強く病気と向き合っていく必要があります。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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