高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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気象病・天気痛について

公開日 2022.5.23

症状

気象病は気温や気圧の変化により、心身の不調をきたす疾患や症状の総称です。

国内の調査では頭痛、肩こり・首こり、倦怠感などの症状が報告されています 1)、(図1)。

身体面だけでなく精神面にも影響があり、抑うつ気分の悪化につながることが報告されています 2)、3)。

図1 気象病の主な症状

気象病の主な症状

疫学

調査を元にした推定では日本人の約60%、女性では約80%が気象病を有すると想定されています。

雨の日に症状が生じると答えた人が約50%、くもりの日に症状が生じると答えた人が30%でした1)、(図2)。

図2 気象病の症状が生じる日の天候についての調査

気象病の症状が生じる日の天候についての調査

また約80%の人は気圧が要因と考えていると報告されています1)、(図3)。

図3 気象病に関連している気象の要因についての調査

気象病に関連している気象の要因についての調査

病態

耳の中にある内耳の半規管という部位が気圧の変化を感じ取り、神経の興奮を脳に伝達し、心身の不調をきたすと想定されています4)、(図4、5)。

図4 内耳の気圧感受メカニズム

内耳の気圧感受メカニズム

図5 天気痛のメカニズム

天気痛のメカニズム

治療

平衡器官を司る半規管がかかわっていることから、抗めまい薬が使用されます。

抗めまい薬にはジフェンヒドラミン(トラベルミン)、ベタヒスチンメシル(メリスロン)、ジフェニドール(セファドール)、アデノシン三リン酸ナトリウム(アデホスコーワ)、アセタゾラミド(ダイアモックス)などがあります。

漢方薬の五苓散は低気圧時の頭痛に有効であり 5)、頭痛を伴うめまいにも効果があるため 6)、気象病にも使用されます。

五苓散はアクアポリンという細胞の膜にある、水の通過を調整するトンネルのようなタンパク質に作用し、体内の水分のバランスを安定させる効果があります。

この作用により体に水が溜まって体が重だるい時などに水分の排泄を促し、だるさを解消する効果があります。

また、炎症を抑える効果があることもわかってきています 7)。

図6 五苓散の薬理作用

五苓散の薬理作用

気象病によって生じる頭痛が片頭痛の場合、予兆が生じた際に抗めまい薬のジフェニドール(セファドール)内服することで頭痛発作を抑制できることが報告されています 8)。

予兆には疲労感、音への過敏、眠気、生あくび、首のこりなどがあります。

気象病では郭が提唱している片頭痛に対する3Y療法(予防、予兆、予測を組み合わせた治療)9)を用いることが有用であるとされています 10)。

朝起きたらすでに雨が降っていて調子が悪く、そこから治療薬を内服しても効果が得にくいことが多いです。

天気アプリなどを用い、気圧が下がる前日の夜には抗めまい薬や五苓散を内服しておくことが推奨されます。

おわりに

もともと日本では「気象」という言葉は大気の状態と人の気分の状態の両方に使われていたそうです。

江戸時代以降になり気分の状態に対しては「気性」とわけて使われるようになったそうです 11)。

古来の人は「雨が降ると古傷が痛む」と同じく、大気と気分を密接に扱っていたのかもしれません。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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