公開日 2020.8.24
SSRIとはSelective Serotonin Reuptake Inhibitor(選択式セロトニン再取り込み阻害薬)の略で、脳内の神経間のセロトニンの再取り込みを阻害します。
その結果、セロトニンの働きを強めたり、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質の産生を通して、うつや不安を改善すると考えられています。
セロトニンの機能低下では気分の落ち込み、不安、さびしい気持ちなどの症状と関連していると想定されています。そのため、うつ病、不安障害などの治療にSSRIが使用されます。
日本で使用されるSSRIは承認順に
があります。各薬剤の効果の強さを図1に示します。
図1
薬の効果が強ければが必ずしも良いというわけではありません。少量の薬だけで良い場合や薬への過敏性を持つ患者さんでは効果の弱い薬を少量使う方が適している場合もあるからです。
フルボキサミンは強迫性障害に使用されることが多いSSRIです。
また、シグマ受容体という脳の神経の受容体に作用し、認知機能に保護的である可能性や精神病症状への有効性が示唆されています。
そのため、統合失調症に伴ううつ病などで使用されることがあります。
一方、多くの薬を飲んでいる患者さんではそれぞれの薬の濃度が上がりやすかったり、睡眠剤のロゼレムと併用できないなどのデメリットがあります。
パロキセチンはSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)に近い薬です。
セロトニンへの作用が強く、ノルアドレナリンへの効果もあるため、効き目は早く出ます。
一方、やめにくい、SSRI中断症候群(のむのをやめたとき、不快な症状がでること)が出やすいなどのデメリットがあります。
セルトラリンは少量から調整が可能な薬剤で女性にも向いている薬です。
パニック障害やPTSDなどにも使用されます。
一方、ドパミンに作用(ドパミンを出す方向に作用)することが分かっており、統合失調症の患者さんなどでは精神病症状が悪化することがあり注意が必要です。
エスシタロプラムは1錠で開始し、効果が得られる薬です。他のSSRIは症状を見て用量を上げていく必要があるため、改善までの時間が早いと言えます。
また最新の抗うつ薬の比較ではSSRIの中で効果と副作用のバランスで他剤より優れていました(図2)。
それでも、やはり1錠で有効量に達するため、副作用が強くでる患者さんもいます。特に吐き気が強くでる患者さんが見られるので十分な吐き気対策が必要です。
図2
当院ではうつや不安でSSRIを使用する場合は、患者様の症状や状態をうかがった上でどの薬を選択するか、話し合いの上決めさせて頂いております。