高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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アクチベーションシンドローム(賦活
症候群)の症状・診断・治療について

公開日 2023.11.6

抗うつ薬の内服開始後に、不安・焦燥・イライラなどが生じる状態をアクチベーションシンドロームと呼びます。

主にSSRIの内服後に生じることが多く、賦活症候群、ジタリネスシンドローム(Jitteriness/anxiety syndrome)とも呼ばれます。

症状

症状として、主に以下のものが挙げられています1)、2)、(図1)。

図1 アクチベーションシンドロームの主な症状

アクチベーションシンドロームの主な症状

診断

アクチベーションシンドロームに対する明確な診断基準は現在ありません。

通常、抗うつ薬(主にSSRIまたはSNRI)を開始2週以内または、増量後に上記症状が出現した場合、鑑別診断を行い、アクチベーションシンドロームと診断します。

鑑別として、うつ状態の悪化による焦燥、不眠や躁転による易刺激性亢進、躁状態があります3)。

また、アルコールや薬物の使用に注意を払う必要があるとされています2)。

疫学

アクチベーションシンドロームは抗うつ薬治療患者の約12~13%で生じるとされています4)。

小児・若年者に比較的多く生じるとされています4)。

児童思春期におけるアクチベーションシンドロームの各SSRIの発症割合は以下であったことが報告されています5)~9)、(図2)。

図2 児童思春期における各SSRIのアクチベーションシンドロームの発症割合

児童思春期における各SSRIのアクチベーションシンドロームの発症割合

成人におけるアクチベーションシンドローム(ジタリネスシンドローム)の各抗うつ薬の発症割合は以下であったことが報告されています10)、(図3)。

図3 成人における各抗うつ薬のアクチベーションシンドロームの発症割合

成人における各抗うつ薬のアクチベーションシンドロームの発症割合

双極性障害は、アクチベーションシンドロームの独立したリスク因子であることがわかっています11)。

TakeshimaとOkaは、双極性障害Ⅱ型及び双極関連障害でアクチベーションシンドロームの発症が、うつ病と比較して、有意に高かったことを報告しています11)。

図4 双極性障害Ⅱ型とうつ病におけるアクチベーションシンドロームの割合

双極性障害Ⅱ型とうつ病におけるアクチベーションシンドロームの割合

小児では、特に抗うつ薬による躁転のリスクが高く12)、うつ病に伴うアクティベーションの症状か、躁転の経過か慎重な鑑別が必要となります。

病態

アクチベーションシンドロームの発症には薬剤の血中濃度の高さが関係していることが報告されています5)、13)、(図5)。

図5 アクチベーションシンドロームの発症とSSRIの血中濃度の高さとの関係

アクチベーションシンドロームの発症とSSRIの血中濃度の高さとの関係

治療に関わる主たる抗うつ薬以外の薬剤により、抗うつ薬を代謝する酵素の働きが阻害されることも、血中濃度上昇をきたし、アクチベーションシンドロームの発症の要因になるとされています4)。

Shirataらは、エスシタロプラムとトラゾドンを内服中の患者が鎮痛剤のセレコキシブ(先発医薬品名:セレコックス)を併用し、アクチベーションシンドローム(ジタリネスシンドローム)を発症した症例を報告しています14)。

エスシタロプラムとトラゾドンの代謝にはCYP2D6が関与しますが、セレコキシブはCYP2D6の働きを阻害するため、血中濃度が上昇し、発症したと考えられています14)。

また、脳のセロトニン5-HT2C受容体はセロトニンが結合し、活性化すると不安が増すことがわかっており15)、16)、5-HT2C受容体が活性化することが、発症に関与すると示唆されています17)、18)、(図6)。

図6 セロトニン症候群とアクチベーションシンドロームの発症機序の比較

セロトニン症候群とアクチベーションシンドロームの発症機序の比較

また、小児・若年者では中枢神経系が成人と比較し、脆弱であることが一因であることも示唆されています7)、19)。

その他以下のリスク因子が挙げられています20)~22)。

図7 アクチベーションシンドロームのリスク因子

アクチベーションシンドロームのリスク因子

治療

治療開始時は漸増が望ましいとされています14)。

通常、新たに開始した抗うつ薬では中止、増量した場合は元の量に戻します。

必要に応じてベンゾジアゼピン系抗不安薬を一時的に頓服として使用します。

また、症状に応じて抗精神病薬やβブロッカーを使用します14)。

一般的にすみやかに対応すれば、数日以内で症状は消退します。

症状の中では不安と不眠と残存しやすいとされ、適切な介入を要します17)。

参考

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執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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