高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 高津区 溝口


睡眠薬について⑥
トラゾドン(デジレル、レスリン)
公開日 2021.5.26
抗うつ薬トラゾドンについて
トラゾドン(先発医薬品名:デジレル、レスリン)は1971年にイタリアで開発、承認された抗うつ薬です。
その後、アメリカ、日本をはじめ多くの国で使用されています。用量は25mgから200mg程度の範囲で調整されます。
抗うつ薬としての効果
抗うつ効果は100mg以上で得られるとされています 1)。
100mg以上使い、抗うつ薬として使用するためには眠気が強く、現在は主として睡眠薬として使用されています。
トラゾドンの抗うつ効果はセロトニン5-HT2A、5-HT2C受容体阻害作用とセロトニン再取り込み阻害作用によるものです。
睡眠薬としての効果
睡眠薬としての効果はセロトニン5-HT2A、ヒスタミンH1、ノルアドレナリンα1受容体阻害作用によると考えられています。
中でもセロトニン5-HT2A受容体阻害作用は睡眠を深くし 2)、途中で目がさめてしまう回数を減らす効果があります 3)。
そのためトラゾドンは夜間や早朝に目がさめてしまう不眠(中途覚醒、早朝覚醒)に一般的に使用されます。
トラゾドンは約8時間効果が持続します。薬物動態を以下に示します。

メリット
トラゾドンは依存、耐性のリスクが低いメリットがあります。
また、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)では5-HT2A、5-HT2C受容体を刺激して性機能障害が生じることがありますが、トラゾドンでは5-HT2A、5-HT2C受容体阻害作用があるため性機能障害が起こるリスクが低いです 4)。
SSRIとの併用でSSRIによる性機能障害を改善する報告もあります 5)。
【文献】
- 1)Stahl SM. : Mechanism of action of trazodone: a multifunctional drug. CNS Spectr, 14 : 536-46, 2009.
- 2)Scharf MB, Sachais BA. : Sleep laboratory evaluation of the effects and efficacy of trazodone in depressed insomniac patients. J Clin Psychiatry, 51 : 13-7, 1990.
- 3)Yi XY, et al. : Trazodone for the treatment of insomnia: a meta-analysis of randomized placebo-controlled trials. Sleep Med, 45 : 25-32, 2018.
- 4)Khazaie H, et al. : Antidepressant-induced sexual dysfunction during treatment with fluoxetine, sertraline and trazodone; a randomized controlled trial. Gen Hosp Psychiatry, 37 : 40-5, 2015.
- 5)Stryjer R, et al. : Trazodone for the treatment of sexual dysfunction induced by serotonin reuptake inhibitors: a preliminary open-label study. Clin Neuropharmacol, 32 : 82-4, 2009.
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執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司
- 精神保健指定医
- 日本精神神経学会認定専門医・指導医
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