高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 高津区 溝口

高津心音メンタルクリニック 心療内科・精神科 川崎市 高津区 溝口

睡眠薬について④
ロゼレム、メラトベル

公開日 2021.2.24

メラトニン受容体作動薬について

メラトニン受容体作動薬にはメラトニン(商品名:メラトベル)とラメルテオン(商品名:ロゼレム)があります。

メラトニンは主として脳の松果体という部分から分泌されるホルモンで、セロトニンから作られます。

メラトニンM1受容体、M2受容体というところに作用し、夜になると眠くなるように働きます。

日中に自然な太陽光を浴びることで、夕方以降に分泌量が促進されます。

一方でスマートフォン、パソコンなどから出るブルーライトはメラトニンの分泌を抑制し、不眠の原因となります 1)。

また、メラトニンは睡眠と覚醒のリズムに関わっており、メラトニンM1受容体がより大きく関与していることがわかってきています 2)、3)。

脳の中でホルモンとして分泌しているものと同じものを薬にしたものがメラトベルです。

メラトベルは小児の神経発達症のみの保険適応で成人にはまだ処方することができません(2021年2月時点)。

ロゼレムはメラトニンと似た構造式(図1)でメラトニンM1受容体、M2受容体に作用し、催眠作用をもつ睡眠薬です。

ロゼレムとメラトニンの作用の強さの比較を図に示します(図2)。

ロゼレムは入眠への効果は穏やかですが、以下のような特色があります。

ロゼレムもメラトベルも抗うつ薬のフルボキサミン(先発医薬品名:デプロメール、ルボックス)と併用することはできません。

一緒に内服すると、ロゼレム、メラトベルの血液中の濃度が高くなりすぎてしまうためです。

ロゼレムは効果が出るまで一定の期間が必要と言われていますが、その効果というのは単なる不眠を背景にした入眠の効果なのか、睡眠・覚醒障害が整うまでのことか、睡眠・覚醒障害に基づく不眠に対する入眠の効果なのかでかわってきます。

単なる不眠であれば初日からの効果も報告されており、必ずしも一定の期間が必要なわけではありません 10)。

メラトベルの小児の神経発達症への適応の利点として、体内のホルモンと同一で安全性が高く作用が穏やかであることに加え、メラトニンの抗けいれん作用が上げられます11)。

てんかんの有病率は一般の小児では約0.5%ですが、自閉スペクトラム症(ASD)の小児ではてんかんを有する率が約12.5%、ADHD(注意欠如・多動症)の小児では約2.3%と高くなります 13)、14)。

メラトベルの内服は神経発達症の小児において、てんかんを抑制するとともに、不眠を改善する脳内の複合的な効果が得られます。

【文献】

睡眠薬の関連コラム一覧

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

医師紹介ページはこちらから