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不眠症に対する睡眠薬の効果
最新の比較

公開日 2023.2.2

2023年1月Yue JLらは成人の不眠症に対する薬剤の有効性と忍容性の比較の解析を報告しました1)。

入眠に対する薬剤の効果の比較では以下の順で有効な結果でした(日本未承認薬を除く)、(図1)。

図1 不眠症の入眠に対する薬剤の有効性の比較

不眠症の入眠に対する薬剤の有効性の比較

中途覚醒に対する効果は以下の順で有効な結果でした(日本未承認薬を除く)、(図2)。

図2 中途覚醒に対する薬剤の効果の比較

中途覚醒に対する薬剤の効果の比較

総睡眠時間の確保への効果は以下の順で有効な結果でした(日本未承認薬を除く)、(図3)。

図3 総睡眠時間の確保に対する薬剤の効果の比較

総睡眠時間の確保に対する薬剤の効果の比較

睡眠効率(実際の睡眠時間÷実際にベッド・布団にヨコになっていた時間×100)に対しては以下の順で有効でした(日本未承認薬を除く)、(図4)。

図4 不眠症における睡眠効率(睡眠時間/就床時間×100)に対する薬剤の比較

不眠症における睡眠効率(睡眠時間/就床時間×100)に対する薬剤の比較

忍容性は以下の順で良好は結果でした(日本未承認薬を除く)、(図5)。

図5 不眠症に対する睡眠剤の忍容性の比較

不眠症に対する睡眠剤の忍容性の比較

これらの結果から著者らはオレキシン受容体拮抗薬が効果、忍容性において良好で中でもレンボレキサント(デエビゴ)が優れた結果であったと述べています。

(入眠に対する有効性と中途覚醒に対する有効性は米国で2022年に3剤目のオレキシン受容体拮抗薬として承認されたダルドレキサントが最も優れていました。)

Zドラッグ(ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン)は有効性は認められるものの、忍容性・安全性へのリスクがあることを指摘しています。

Yue JLらの報告に先立ち、2022年6月De Crescenzo Fらによって成人の不眠症に対する薬物治療の効果を比較した研究結果が報告されていました2)。

この研究の解析では、4週間の短期間での薬剤の有効性の比較では、以下の順で有効な結果でした(日本未承認薬を除く)、(図6)。

図6 短期間における不眠症に対する睡眠薬の効果の比較

短期間における不眠症に対する睡眠薬の効果の比較

3か月以上の長期間における薬剤の有効性の比較では、以下の2剤が有効な結果でした(図7)。

図7 長期間における不眠症に対する睡眠薬の効果の比較

長期間における不眠症に対する睡眠薬の効果の比較

4週間の短期間での薬剤の忍容性の比較では以下の2剤が忍容性が低い結果でした。

3か月以上の長期間における薬剤の忍容性の比較ではゾルピデムが忍容性の低い結果(オッズ比2.02)でした。

安全性の比較では以下の順に安全性が低い結果でした(図8)。

図8 不眠症に対する睡眠薬の安全性の比較

不眠症に対する睡眠薬の安全性の比較

これらの結果から著者らは、全体として不眠症に対し、エスゾピクロン(ルネスタ)とレンボレキサント(デエビゴ)が良好な薬剤プロフィールを有するとしつつも、エスゾピクロン(ルネスタ)は有害事象の懸念があり、レンボレキサント(デエビゴ)は現段階では安全性の確率は不十分と述べていました。

今回の2023年1月のYue JLの解析でレンボレキサント(デエビゴ)の忍容性・安全性はより明確になったと言えます。

文献

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執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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