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承認申請中の不眠症治療薬
ダリドレキサントの特徴・作用・副作用

公開日 2023.11.27

作用・特徴

ダリドレキサントは、覚醒に関与する神経ペプチドであるオレキシンの受容体(OX1RおよびOX2R)への結合を選択的に阻害し、自然な睡眠状態への移行を促す睡眠剤です。

スイスのイドルシア ファーマシューティカルズ社によって開発され、2022年1月に米国で、2022年4月に欧州で承認され、「QUVIVIQ」の商品名で販売されています。

国内では2023年10月31日にイドルシア ファーマシューティカルズ ジャパン社によって承認申請が行われています。

承認されれば、国内では、スボレキサント(医薬品名:ベルソムラ)、レンボレキサント(医薬品名:デエビゴ)に次ぐ3剤目のオレキシン受容体拮抗薬となります。

2023年1月にYueらが報告した、成人の不眠症に対する薬剤の有効性と忍容性の比較解析において、ダリドレキサントは入眠に対する有効性が最も優れていました1)、(図1)。

図1 睡眠剤の入眠に対する有効性の比較

睡眠剤の入眠に対する有効性の比較

他にダリドレキサントの特徴は大きく2つ挙げられています。

図2 各オレキシン受容体拮抗薬の血中濃度の推移

各オレキシン受容体拮抗薬の血中濃度の推移

スボレキサント(ベルソムラ)は半減期が約12時間、レンボレキサント(デエビゴ)5mgは約31時間で持ち越し効果(翌日の眠気)が生じることが弱点でしたが、その点が改善されており、より理想的な睡眠剤となっています。

構造はスボレキサント(ベルソムラ)と同じ、2H-1,2,3-トリアゾール環を有する構造となっています4)、(図3)。

図3 スボレキサントとダリドレキサントの化学構造式

スボレキサントとダリドレキサントの化学構造式

オレキシン受容体拮抗薬では、2H-1,2,3-トリアゾール環が重要な構造の1つであることが指摘されています4)。

オレキシン1受容体、2受容体の阻害作用が強いことがわかっています5)、(図4)。

図4 各オレキシン受容体拮抗薬のオレキシン1受容体・2受容体の阻害率の比較

各オレキシン受容体拮抗薬のオレキシン1受容体・2受容体の阻害率の比較

剤型

海外では、25mg錠と50mg錠が承認されています。

薬物動態

ダリドレキサントは25~50mg内服後、約1~2時間で血液中の濃度は最高濃度に達し、約8時間で半減します1)、(図5)。

図5 ダリドレキサントの血中濃度の推移

ダリドレキサントの血中濃度の推移

肝臓で主としてCYP3A4により代謝されます1)、6)、(図6)。

図6 ダリドレキサントの肝臓での代謝

ダリドレキサントの肝臓での代謝

副作用

主な副作用は以下が報告されています1)、7)(図7)。

図7 ダリドレキサントの主な副作用

ダリドレキサントの主な副作用

まれな副作用として以下が報告されています1)。

参考

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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