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ロルメタゼパム(エバミール・
ロラメット)の特徴・作用・副作用

公開日 2023.6.5

作用・特徴

ロルメタゼパム(商品名:エバミール・ロラメット)は寝つきをよくする作用と不安を和らげる作用を有する短時間型ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。

ロラゼパム(ワイパックス)と同じ開発系統の中で、米国ワイス者(現ファイザー社)で合成されました。

日本では、1990年よりバイエル社からエバミールの商品名で、アステラス製薬からロラメットの商品名で発売されました。(ロラメットは、2011年よりアステラス製薬からあすか製薬に販売が移行しています。)

ロラゼパム(ワイパックス)と化学構造が近く、入眠作用、抗不安作用だけでなく、比較的強い抗けいれん作用を有する特徴があります1)、(図1、2)。

図1 ロラゼパムとロルメタゼパムの化学構造式

ロラゼパムとロルメタゼパムの化学構造式

図2 短時間作用型ベンゾジアゼピン系睡眠薬の抗けいれん作用の比較

短時間作用型ベンゾジアゼピン系睡眠薬の抗けいれん作用の比較

一方、筋弛緩作用は弱く、睡眠薬として催眠作用と筋弛緩作用の分離が大きいことが示されています。(夜間の転倒のリスク等が低くなり、好ましい薬理プロファイルという意味です)。2)、(図3)

図3 ベンゾジアゼピン系睡眠薬の催眠作用と筋弛緩作用の分離化

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の催眠作用と筋弛緩作用の分離化

ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬が結合するGABA受容体はω1(オメガ1)受容体とω2(オメガ2)受容体の2つのサブタイプがあります。

ω1受容体は催眠作用に関与し、ω2受容体は筋弛緩作用に関与します。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬はω1受容体とω2受容体への結合への選択性はありませんが、ロルメタゼパムは、他のベンゾジアゼピンと異なり、ω1受容体に対し、ω2の3倍ほど高い親和性で結合することわかっています2)、(図4)。

図4 ロルメタゼパム(エバミール・ロラメット)のω1受容体への結合親和性

ロルメタゼパム(エバミール・ロラメット)のω1受容体への結合親和性

この作用を介し催眠作用と筋弛緩作用の分離を示すと考えられています2)。

このことは後に登場するZ-drugのゾルピデムがω1受容体に選択的に結合する薬剤であることを考えると、ロルメタゼパムが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬とZ-drugの間に位置する薬剤であると言えます。

剤型

剤型は錠剤1mg錠があります(図5)。

図5 ロルメタゼパム(エバミール・ロラメット)の剤型

ロルメタゼパム(エバミール・ロラメット)の剤型

効能・効果

効能・効果は不眠症となっています。

用法・用量

通常,成人では1回1~2mgを就寝前に内服します。

なお、年齢、症状により適宜増減しますが、高齢者では1回2mgを超えないこととなっています。

薬物動態

ロルメタゼパム1mgを内服した際の血液中の濃度は約1~2時間で最高濃度に達し、約10時間後に半分に下がります(図6)。

図6 ロルメタゼパム(エバミール・ロラメット)を1mg内服した際の血中濃度の推移

ロルメタゼパム(エバミール・ロラメット)を1mg内服した際の血中濃度の推移

ロルメタゼパムは肝臓でグルクロン酸抱合にて代謝されます。

ごく一部脱メチル化され、ロラゼパムとなり、ロラゼパムのグルクロン酸抱合体となります3)、(図7)。

図7 ロルメタゼパム(エバミール・ロラメット)の肝臓での代謝

ロルメタゼパム(エバミール・ロラメット)の肝臓での代謝

いずれもほとんどが腎臓から尿として排泄されます。

高齢者では血液中の濃度が半分に減少するのが、約20時間と成人の約2倍に延長することが報告されています4)。

副作用

承認時までの調査症例1,096例中188例(17.15%)に副作用が認められ、代表的な副作用は以下でした。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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