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ロラゼパム(ワイパックス)の
作用・特徴・副作用

公開日 2023.4.24

作用・特徴

ロラゼパム(ワイパックス)はオキサゼパム(日本未承認のベンゾジアゼピン系抗不安薬)を元に研究、開発された、強い抗不安作用と、強い抗けいれん作用を有するベンゾジアゼピン系抗不安薬です1)。

後に合成される睡眠導入剤のロルメタゼパム(エバミール・ロラメット)は、同じ開発の系統から見出されました。

これらは、3-ヒドロキシベンゾジアゼピン系に属し(図1)、いずれも、ベンゾジアゼピン系の中で比較的強い抗けいれん作用を有する特徴を有します。

図1 3-ヒドロキシベンゾジアゼピン系

3-ヒドロキシベンゾジアゼピン系

ロラゼパム(ワイパックス)は他のベンゾジアゼピン系抗不安薬と同様に、催眠作用も有しますが、筋弛緩作用もほとんどありません1)、2)、(図2)。

図2 ロラゼパム(ワイパックス)の作用

ロラゼパム(ワイパックス)の作用

1978年から先発医薬品の錠剤のワイパックスが発売されていますが、2019年より注射液のロラゼパム(ロラピタ)も発売されています。

剤型

剤型は錠剤では0.5mg錠と1mg錠があります。

また、静脈投与用の注射液があります(図3)。

図3 ロラゼパムの錠剤(ワイパックス)と注射液(ロラピタ)の剤型

ロラゼパムの錠剤(ワイパックス)と注射液(ロラピタ)の剤型

効能・効果

効能・効果は以下となっています。

米国では「不安障害、不安症状、抑うつ症状に伴う不安」、「日常生活のストレスに伴う不安、緊張」で承認を得ています。

英国では「不眠または心身、器質、精神疾患に伴う、または伴わない不安」、「歯科と外科手術における前投与」で承認を得ています(図4)。

図4 ロラゼパム(ワイパックス)の各国の保険適応

ロラゼパム(ワイパックス)の各国の保険適応

ロラゼパムは不安以外にも抗精神病薬の副作用のアカシジアの治療にも使用されます3)。

注射液のロラピタの効能・効果は以下となっています。

てんかん重積状態

ロラゼパムの静脈投与は海外では、てんかん以外に精神科領域でカタトニア(緊張病)と呼ばれる病態に第1選択として使用され、その有効性が確立していました4)、5)。

用法・用量

内服薬の錠剤は通常、成人1日では、1~3mgを1日2~3回に分けて内服します。

なお、年齢・症状により適宜増減します。

注射液のロラピタは、通常、成人にはロラゼパムとして4mgを静脈内投与する。

投与速度は 2mg/分を目安として緩徐に投与すること。

なお、必要に応じて 4mgを追加投与するが、初回投与と追加投与の総量として8mgを超えないこととなっています。

通常、生後 3ヵ月以上の小児にはロラゼパムとして 0.05mg/kg(最大4mg)を静脈内投与する。

投与速度は2mg/分を目安として緩徐に投与すること。

なお、必要に応じて0.05mg/kg を追加投与するが、初回投与と追加投与の総量として0.1mg/kg を超えないこととなっています。

薬物動態

ロラゼパムはほとんどが、肝臓でグルクロン酸抱合にて代謝され、尿中に排泄されます。

ロラゼパムを1回内服した際の血液中の濃度は約2時間で最高濃度に達し、約12時間で半減します6)、(図5)

図5 ロラゼパム(ワイパックス)を1回内服した際の血中濃度の推移

ロラゼパム(ワイパックス)を1回内服した際の血中濃度の推移

ロラゼパム注射液(ロラピタ)を静脈内投与した際は、血液中の濃度は約30分で最高濃度に達し、約14時間で半減します7)、(図6)

図6 ロラゼパム注射液(ロラピタ)を静脈内に投与した際の血中濃度の推移

ロラゼパム注射液(ロラピタ)を静脈内に投与した際の血中濃度の推移

副作用

ロラゼパム(ワイパックス)の承認時までの調査症例1,045例中255例(24.4%)に副作用が認められ、代表的な副作用は以下でした。

参考

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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