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睡眠薬について②
マイスリー、ルネスタ

公開日 2021.1.25

Z-drugsについて

Z-drugsには日本ではゾルピデム(商品名:マイスリー)、ゾピクロン(商品名:アモバン)、エスゾピクロン(商品名:ルネスタ)、海外ではザレプロンという薬も使用されています。
(図1)

Z-drugsは脳内で興奮を抑える働きをするGABAが結合するGABAA受容体(図2)1)の一部に選択的に結合して、GABAの作用を強めます。

Z-drugsの利点はベンゾジアゼピン系睡眠薬と比較して依存、耐性のリスクが低いこと、深い睡眠がえられることが上げられます。

うつ病では睡眠が浅くなることがわかっています 2)。このため、うつ病の不眠治療では優先順位の高い選択肢になります。
(図2)

一方、転倒、骨折のリスクはベンゾジアゼピン系睡眠薬と同様にあるために高齢者では注意が必要です 3)。

睡眠時遊行症(寝ぼけて歩いてしまう)が生じることがあるため、この点にも注意が必要です。

ゾルピデム(商品名:マイスリー)は寝付きを良くする効果があり、日本で承認後、それまでのブロチゾラム(商品名:レンドルミン)などのベンゾジアゼピン系睡眠薬にかわり、入眠困難に広く使われるようになりました。

統合失調症と双極性障害に対しては保険適応がなく、使用できません。

まれに睡眠関連摂食障害(Sleep Related eating disorder ; SRED:夜間に眠ったまま起きて食べ物を食べてしまう病態)がゾルピデム内服後に生じることがあり 4)、このような夜間の行動が生じた場合は中止する必要があります。

ゾピクロン(商品名:アモバン)も同じく寝付きを良くする効果があり、入眠困難に使用されます。

副作用として苦みがでることがあり、苦みを強く生じた場合は継続できないデメリットがあります。

エスゾピクロン(商品名:ルネスタ)はゾピクロン(アモバン)から作られた薬です(正確には光学異性体というものです)。

光学異性体を用いた薬の開発には、副作用を少なくすることと、効果を高めるバランスにあります。

花粉症の薬のセチリジン(商品名:ジルテック)とレボセチリジン(商品名:ザイザル)もこの関係です。

より眠気を少なくして、抗アレルギー効果は高めるというものです。

エスゾピクロン(ルネスタ)ではゾピクロン(アモバン)より苦みを少なくして、入眠作用だけでなく中途覚醒(夜間に起きてします)を抑える効果ももっています。

米国では依存、耐性形成の少なさから睡眠薬ではじめて処方日数制限なしでの承認が認められました。

日本でも向精神薬に指定されていません(2021年1月時点)。

エスゾピクロン(ルネスタ)の効果として、抗うつ薬との併用でうつ病の改善への増強効果が得られることが報告されています(図3)5)。
(図3)

また更年期障害の不眠、PTSDにも有効であることが報告されています 6)、7)。このようにエスゾピクロンは優れた面があります。

しかし、ゾピクロン(アモバン)より苦みは少ないとされているものの(図4)8)、苦みがでてしまう場合は継続が難しいという面もあります。
(図4)

【文献】

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執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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