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睡眠薬について⑦
ミアンセリン(テトラミド)

公開日 2022.10.31

抗うつ薬ミアンセリン(テトラミド)について

ミアンセリン(テトラミド)は1966年にオランダのオルガノン社(現MSD社)で開発された、四環系抗うつ薬という抗うつ剤に分類される薬です。

日本では1983年に発売され使用されています。

シナプス前α2アドレナリン自己受容体を阻害し、シナプス間隙のノルアドレナリンの放出を促進します。

セロトニンに対しては抗セロトニン作用を有しています。

三環系抗うつ薬の副作用の便秘、口渇などの原因となる抗コリン作用を減少させることに成功しました。

しかし、眠気の副作用が強く、現在は少量を睡眠剤として使用したり、他の抗うつ剤と睡眠剤を兼ねた併用療法として使用されることが多いです。

抗うつ薬としての効果

抗うつ効果は約60mgで得られると考えられています1)、2)。

実際には60mgを使い治療することは翌日の眠気が強く残り困難と言えます。

入院治療などで上記のように不眠に対する睡眠剤と抗うつ剤の併用療法を兼ねて30mg程度を使用することがあります。

睡眠薬としての効果

ミアンセリン(テトラミド)はレム睡眠を減少させ、ノンレム睡眠のステージⅡを増加させます3)、4)。

薬の効果は若年者では約10時間~18時間程、高齢者では約1日~2.5日以上持続します5)、6)、7)、(図1)。

図1 ミアンセリン(テトラミド)の血中濃度の推移

この効果により、睡眠剤としての使用ではトラゾドン(デジレル、レスリン)と同じく、夜間途中で目がさめてしまう中途覚醒や、明け方に目が覚めてしまう早朝覚醒に使用されます。

メリット

トラゾドンと同様に依存・耐性のリスクが低い(ほぼ無い)メリットがあります。

また、トラゾドンとミアンセリン(テトラミド)はせん妄の治療としても有効であることが報告されています8)、(図2)。

図2 トラゾドン・ミアンセリン(テトラミド)のせん妄改善率

そのため、高齢者ではトラゾドンとミアンセリン(テトラミド)による不眠の治療はせん妄のリスクの低下にもつながると考えられます。

デメリット

翌日に眠気が残る「持ちこし」の副作用に個人差があり、10mgでも持ちこしが生じることは多くみられます。

そのため、用量の微調整が必要となります。

また、アカシジアを誘発するリスクがあるため9)、認知症の方に使用していて、落ち着かなさが生じた際は周辺症状の不穏との慎重な鑑別を要します。

【文献】

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執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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