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クエチアピン(セロクエル)
クエチアピン徐放剤(ビプレッソ)について

公開日 2021.6.14

クエチアピンの効果

クエチアピン(先発医薬品名:セロクエル)はもともと統合失調症の治療薬として開発されました。

しかし、その後、双極性障害(躁うつ病)のうつ状態に効果あることがわかり、双極性障害うつ状態に対し広く使用されるようになりました。

双極性障害うつ状態以外にもうつ病、うつ病への増強療法、全般性不安障害にも有効(図1)であることから 1)、2)、3)、4)、症状に合わせ使用されています。

せん妄に対し使用されることもあります 5)。うつと不安の両方にバランス良く効果を発揮する薬です。

図1

クエチアピンの不安への効果

クエチアピンの作用をゆっくり持続するようにしたのがクエチアピン徐放剤(ビプレッソ)です。

クエチアピン、クエチアピン徐放剤の保険適応

クエチアピンは日本では統合失調症のみの保険適応ですが、アメリカでは統合失調症、双極性障害躁病エピソード(躁状態)、双極性障害うつ病エピソード(うつ状態)に保険適応があります。

クエチアピン徐放剤(ビプレッソ)は日本では「双極性障害におけるうつ症状の改善」に保険適応を取得しています。

アメリカでは「双極性障害におけるうつ症状の改善」に加え統合失調症、双極性障害躁病エピソード・混合性エピソード、うつ病、抗うつ薬との併用に適応があります(図2)。

図2

クエチアピンとクエチアピン徐放剤の保険適応

作用機序

クエチアピンの作用の特徴は脳の作用部位に「弱く結合し早く離れる(low affinity and fast dissociation)」ことです(図3)6)。

これにより錐体外路症状という副作用が出にくい特徴があります。

図3

クエチアピンの弱い結合と早い解離

クエチアピンの代謝産物のノルクエチアピンはノルアドレナリントランスポーター、セロトニン5HT-1A受容体へ結合しやすしことがわかっています(図4)7)。

図4

クエチアピン、ノルクエチアピンの各受容体親和性

クエチアピン、クエチアピン徐放剤の抗うつ作用はノルクエチアピンのノルアドレナリン取り込み阻害作用とセロトニン5HT-1A受容体部分活性化作用のよるとされています(図5)7)。

図5

ノルクエチアピンの作用

ノルクエチアピンは三環系抗うつ薬のアモキサンに構造が似ていることが分かっています(図6)7)。

図6

ノルクエチアピンとアモキサンの構造

アモキサンは現在主流のSSRIやSNRIといった新規抗うつ薬で効果が得られない場合やうつの症状が重い際に使用されることがあり、優れた効果が得られることがあります。

クエチアピンの抗うつ作用には、他に5HT-7受容体阻害作用、シグマ受容体活性化作用も関与していることが想定されています 8)。

また、脳脊髄液中で神経ペプチドのニューロペプチドYが増加することにより、抗うつ効果、抗不安効果に関与している研究も報告されています 9)。

内服方法について

クエチアピンは1日3回の内服と薬の説明書では書かれていますが、抗ヒスタミン作用が強く眠気が強くでるため、通常寝る前に1回使用されます。

クエチアピン徐放剤(ビプレッソ)寝る前の内服で食後2時間あけての内服とされていますが、これは脂肪分の多い食事をとるとビプレッソの薬の濃度が高くなるためです。

ですが、軽い軽食であれば問題ないので寝る前に空腹で何か食べたければ軽く軽食をとっても問題ありません 10)。

注意点

クエチアピンは頻度不明ながらも血糖値が上昇するリスクがあるため、糖尿病がある場合には使用できません。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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