2022年1月Chawla, N.らによってパニック障害に対する薬物治療の効果を比較した研究結果が報告されました 1)。この研究では薬剤クラス間での比較(図1)とSSRI間での比較(図2)が行われています。
有効性と忍容性を考慮するとSSRIが優れていました。有効性のみで見るとSSRI、TCA(三環系抗うつ薬)、BZD(ベンゾジアゼピン系抗不安薬;アルプラゾラム、ロラゼパムなど)が優れていました。
ブスピロン(バスパー;日本未承認)は日本のタンドスピロン(セディール)にほぼ近い薬ですが、忍容性は良好(副作用は少ない)なものの、効果は劣る結果でした。
SSRI間での比較では有効性と忍容性を考慮すると、エスシタロプラム(レクサプロ)とセルトラリン(ジェイゾロフト)が優れている結果でした。
パロキセチン(パキシル)、フルボキサミン(ルボックス・デプロメール)、フルオキセチン(プロザック;日本未承認)は有効性を有するものの、有害事象が高い(忍容性が低い)結果でした。
これらの結果から著者らは、従来の各ガイドラインで推奨されているようにパニック障害ではSSRIが第1選択で、それに加え、SSRIの中ではエスシタロプラム(レクサプロ)とセルトラリン(ジェイゾロフト)が選択肢として好ましいという結果を報告しています。
第2選択としてSNRIになりますが、2021年のDu, Y.らのパニック障害に対する抗うつ薬及びベンゾジアゼピン系抗不安薬の効果を比較した研究ではエスシタロプラム(レクサプロ)、ベンラファキシン(イフェクサーSR)、ベンゾジアゼピン系抗不安薬が有効性と忍容性で優れていました 2)、(図3)。(この研究は上述のChawla, N.らの研究と比較し規模が小さいもので上述の研究結果を踏まえ参考程度になります。)
この結果からベンラファキシン(イフェクサーSR)は第2選択肢として検討されます。また、イミプラミン(トフラニール)の有効性も示されており、SSRI、SNRIも副作用等で使用できない際は三環系抗うつ薬ではイミプラミン(トフラニール)の使用が検討されます。
イミプラミン(トフラニール)は従来からパニック障害への有効性が示されており 3)、4)、SSRIが登場する前は、古くから使用されており、従来の治療と矛盾しない結果が示されたとも言えます。
抗うつ薬(SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬)で治療開始した際はベンゾジアゼピン系抗不安薬を併用、または頓用で使用することがあります。
また、抗うつ薬が使用できない時はベンゾジアゼピン系抗不安薬で治療を行うこともあります。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬では高力価(作用の強い)のアルプラゾラム(ソラナックス・コンスタン)などが頓用で使用されます。
同じく高力価で作用時間の長いクロナゼパム(ランドセン・リボトリール)、ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)が併用、または単剤として一般的に使用されます。