高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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タンドスピロン(セディール)の
特徴・作用・副作用

公開日 2023.5.9

作用・特徴

タンドスピロン(セディール)はアザピロン系抗不安薬に属する薬で不安を和らげる作用があります。

大日本住友製薬(現住友ファーマ社)により開発され、1996年より販売されています。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬と異なり、依存・耐性が生じない特徴を有します。

また、抗不安作用以外に抗うつ作用、精神疾患等に伴う認知機能低下の改善の効果を有するとされています。

タンドスピロンはセロトニンの受容体の中の5-HT1A受容体に選択的に結合し、部分作動薬(パーシャルアゴニスト)として作用します。

脳の背側縫線核という部位のシナプス前セロトニン5-HT1A受容体に部分作動薬として作用し、セロトニン神経系の過剰な興奮を抑制することにより不安を和らげます1)、2)、(図1)。

図1 タンドスピロン(セディール)の抗不安作用の作用機序

タンドスピロン(セディール)の抗不安作用の作用機序

5-HT1A受容体部分作動薬はシナプス後セロトニン神経の5-HT2受容体を減少させることにより、抗うつ作用を発揮すると考えられています1)。

また、前頭前野のドパミン放出を促進させることや、海馬のニューロンを新生させることが報告されています3)、4)。

これらの作用により抗うつ作用、認知機能低下の改善の効果も発揮していると示唆されています4)~10)。

統合失調症治療における抗精神病薬の追加補助療法(add-on therapy)として、認知機能改善の可能性が示唆されていましたが11)、認知機能改善のみならず精神症状の改善への有効性も報告されるようになっています12)。

タンドスピロン(セディール)は日本と中国で承認されています。

諸外国では、同じセロトニン5-HT1A受容体部分作動薬のアザピロン系抗不安薬であるブスピロン(商品名バスパー)が承認され、使用されています。

いずれも作用はほぼ同等で、化学構造式も近い構造となっています(図2)。

図2 タンドスピロン(セディール)とブスピロン(バスパー)の化学構造式

タンドスピロン(セディール)とブスピロン(バスパー)の化学構造式

第2世代抗精神病薬、抗うつ薬には5-HT1Aパーシャルアゴニスト作用(又はアゴニスト作用)を有するものがあり、タンドスピロンはおおむね中間程度の強さです(図3)。

図3 各薬剤の5-HT1Aパーシャルアゴニスト(又はアゴニスト)作用の強さの比較

各薬剤の5-HT1Aパーシャルアゴニスト(又はアゴニスト)作用の強さの比較

剤型

剤型は錠剤で5mg錠、10mg錠、20mg錠があります(図4)。

図4 タンドスピロン(先発医薬品セディール)の剤型

タンドスピロン(先発医薬品セディール)の剤型

効能・効果

効能・効果は以下となっています。

用法・用量

通常、成人では1日30mgを3回に分け内服します。

なお、年齢・症状により適宜増減しますが、1日60mgまでとするとなっています。

薬物動態

タンドスピロンの代謝にはCYP3A4及びCYP2D6が関与しています。

タンドスピロンを食後に1回内服すると、約1.4時間後に血中濃度は最高濃度に達し、約1.4時間後に半減します。

空腹時に使用すると、約50分で血中濃度は最高濃度に達し、約1.2時間後に半減します(図5)。

図5 タンドスピロン(セディール)を1回内服した際の血中濃度の推移

タンドスピロン(セディール)を1回内服した際の血中濃度の推移

食事による薬の効果への影響はありません。

副作用

承認時まで調査症例1451例中229例(10.3%)に副作用発現が生じましたが、主なものは眠気が2.96%でした。

眠気以外の副作用は全て1%以下で副作用発現のリスクは少ない薬剤です。

文献

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執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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