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ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)の 特徴・作用・副作用

公開日 2023.5.15

作用・特徴

ロフラゼプ酸エチル(先発医薬品名:メイラックス)は不安を抑える作用が比較的強く、作用時間が長い特徴を有するベンゾジアゼピン系抗不安薬です1)。

クロラゼプ酸二カリウム(先発医薬品名:メンドン)に改良を加える開発の中で、フランスのサノフィ社により1975年に合成されました(図1)。

図1 クロラゼプ酸二カリウム(メンドン)とロフラゼプ酸エチル(メイラックス)の化学構造式

クロラゼプ酸二カリウム(メンドン)とロフラゼプ酸エチル(メイラックス)の化学構造式

日本では明治製菓ファルマ社より1989年から販売されています。

ロフラゼプ酸エチルは、肝臓で代謝を受けた代謝産物が、効能を発揮するプロドラッグです2)。

(プロドラッグは代謝された後の活性代謝産物が、薬の作用としての効能を発揮する薬のことで、代表的なものにロキソニンがあります。作用部位で直接効果を発揮させたり、効果時間を持続させるなどのメリットがあります。)

実際に脳内で効能を示す代謝産物M-1、M-2は抗不安作用の他に、強い抗けいれん作用と中程度の催眠作用を有しています1)、3)、(図2)。

図2 ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)の作用

ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)の作用

ベンゾジアゼピン系抗不安薬にみられる副作用の協調運動抑制作用は弱いことがわかっています1)、3)。

そのため、高齢者にベンゾジアゼピン系抗不安薬を使用する際の選択肢の一つとなっています4)。

剤型

剤型は錠剤が1mg錠、2mg錠と細粒1%があります(図3)。

図3 ロフラゼプ酸エチル(先発医薬品メイラックス)の剤型(錠剤)

ロフラゼプ酸エチル(先発医薬品メイラックス)の剤型(錠剤)

効能・効果

効能・効果は以下となっています。

パニック症(パニック障害)などの不安障害への有効性が認められており5)、6)、SSRIなどが副作用で使用できない場合に使用されることがあります。

また、味覚障害への有効性が報告されており、原因が特定できない味覚障害や、心因性の味覚障害に使用されることがあります7)、8)。

海外ではフランスとメキシコで承認を得ています(商品名Victan)。

フランスでは「重篤な不安症状の治療」、「アルコール離脱振戦せん妄の予防及び治療」に保険承認を得ています。

メキシコでは「不安」、「心的外傷後の不安」、「重度の神経疼痛に関連する不安」、「全般性不安障害」、「パニック発作」、「振戦せん妄」に保険承認を得ています(図4)。

図4 ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)の各国の保険適応

ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)の各国の保険適応

用法・用量

通常、成人には、2mgを1日1~2回にわけて内服します。

なお、年齢、症状に応じて適宜増減します。

(薬の説明書には上記のように記されていますが、眠気が生じることがあるため0.5~1mgから開始するのが一般的です。)

薬物動態

ロフラゼプ酸エチルは内服後、肝臓で薬剤として効果を発揮する成分(活性代謝産物)であるM-1とM-2に代謝されます(図5)。

図5 ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)の肝臓での活性代謝産物への代謝

ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)の肝臓での活性代謝産物への代謝

ロフラゼプ酸エチルを1日1回内服した際の血液中の濃度(活性代謝産物M-1及びM-2の濃度)は約50分で最高濃度に達し、約122時間後に半分に下がります(図6)。

図6 ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)を1回内服した際の血中濃度の推移

ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)を1回内服した際の血中濃度の推移

ロフラゼプ酸エチルを毎日内服した際はおおよそ1~3週間で一定の濃度に達し、薬剤の蓄積性は認められません9)、(図7)。

図7 ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)を毎日内服した際の血中濃度の推移

ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)を毎日内服した際の血中濃度の推移

食事の影響はありません。

副作用

承認時まで調査症例1,452例中204例(14.05%)に副作用が認められ、代表的なものは以下でした。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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