高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

高津心音メンタルクリニック 心療内科・精神科 川崎市 溝の口

過敏性腸症候群(IBS)
について

公開日 2023.1.23

症状・分類

過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)は、内視鏡検査などによる腸の検査では異常はないものの、下痢や便秘を生じ、それに伴い腹痛、腹部膨満感等が生じる疾患です。

主に以下の3タイプに主に分類されます(図1)。

図1 過敏性腸症候群(IBS)の主な3タイプ

下痢型IBSでは、朝の通学時、通勤時に満員電車の中で腹痛、便意をもよおし、トイレにかけこむ。テストやプレゼンなど大事な日に腹痛、下痢が生じるといった症状がみられやすいです。

便秘型IBSでは、主に女性で、不快なおなかの張りと便秘が、仕事や育児のストレスとともに生じるといった症状がみられやすいです。

疫学

有病率は約9%で男性より女性に多いと報告されています1)。

発症リスクとして、以下の要因等が挙げられています2)~4)。

過敏性腸症候群では精神疾患・身体疾患の併存率が高いことがわかっています。

以下の疾患などの併存率の高さが指摘されています4)~10)。

身体疾患の中でもIBSと同様に、ストレスが関与する消化管障害として、胃食道逆流症、機能性ディスペプシアとの併存がみられることが報告されています11)、(図2)。

図2 過敏性腸症候群(IBS)、胃食道逆流症(GERD)、機能性ディスペプシア(FD)の併存関係

また、小腸内で細菌が増殖し、腹痛、腹満感、便秘、下痢等が生じる小腸内細菌異常増殖(SIBO:small intestinal bacterial overgrowth)との併存が多いことが報告されています12)、13)。

病因・病態

上記の発症リスクが起因、関与しつつ、一般には主にストレスが大きく影響しています。

過敏性腸症候群ではストレスがかかると、腸の動きが亢進することがわかっています。

同時に腸の動きが亢進すると、脳が不安を感じやすくなっています14)。

これらは脳と腸が密接に関連しており従来「脳腸相関」と呼ばれていましたが、近年はより直接的な関係にあるとされ「脳腸軸(gut-brain axis:GBA)」と呼ばれています(図3)。

図3 過敏性腸症候群(IBS)における脳腸軸(gut-brain axis)

治療

食事の改善や薬による治療が用いられます(図4)。

下痢型IBSでは主に以下の薬が用いられます。

便秘型IBSでは主に以下の薬が用いられます。

混合型IBSでは主に以下の薬が用いられます。

図4 過敏性腸症候群(IBS)の各タイプに使用する薬剤

プロバイオティクス(乳酸菌などの腸内細菌叢を整える菌や、それらの菌を含む薬や食品)も有効であると報告されており15)、医薬品では主に以下のものが使用されます。

IBSに対するプロバイオティクスの有効性の比較では、バチルス.コアグランス(Bacillus coagulans)の有効性の高さが報告されています15)、(図5)。

図5 過敏性腸症候群(IBS)に対するプロバイオティクスの有効性の比較

バチルス.コアグランスは身近なところではお菓子のビスコに入っています。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)、三環系抗うつ薬も有効であることが報告されています16)、17)。

そのため、うつ病や不安障害が併存している場合、ストレス負荷が強い場合には使用されることがあります。

漢方薬と西洋ハーブの有効性も報告されています18)~20)。

下痢型IBSでは桂枝加芍薬湯などが用いられることがあります。

便秘型IBSでは大建中湯などが用いられることがあります。

西洋ハーブではペパーミントオイルが有効とされています20)。

ビタミンD欠乏がある場合はビタミンDを補充することで、IBSの改善の効果が得られることが報告されています21)。

近年、発症に免疫・アレルギーが関与していることが徐々に解明されてきており22)、23)、抗アレルギー剤を使用することもあります。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

医師紹介ページはこちらから