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三環系抗うつ薬
トリプタノールとアナフラニールについて

公開日 2021.9.14

新規抗うつ薬と三環系抗うつ薬の比較

抗うつ薬は現在SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み作用阻害剤)などの新規抗うつ薬が主に使用されます。

新規抗うつ薬が登場する以前は三環系抗うつ薬という種類の抗うつ薬が使用されていました。

新しく開発される薬剤は過去に使用されていた薬剤より効果が優れると期待が持たれます。

しかし、メンタルヘルス領域では実際には効果はかわらず、副作用が軽減されている薬剤として承認されることも多くあります。

新規抗うつ薬も三環系抗うつ薬より効果は優れておらず、副作用が軽減されている薬剤と医療者間では考えられていました。

2018年に解析された抗うつ薬の効果と忍容性の比較の論文では以前の研究論文で含まれなかった三環系抗うつ薬のアミトリプチリン(先発医薬品名:トリプタノール)とクロミプラミン(先発医薬品名:アナフラニール)が含まれました 1)。

薬剤同士の比較では新規抗うつ薬の有効性と忍容性が高い結果でしたが(図1)、プラセボ対照試験も含めた全試験を含めた結果では有効性と忍容性が最も優れていたのは三環系抗うつ薬のアミトリプチリンでした(図2)。

図1 うつ病治療における抗うつ薬の有効性と忍容性(薬剤間の直接比較)

うつ病治療における抗うつ薬の有効性と忍容性(薬剤間の直接比較)

図2 うつ病治療における抗うつ薬の有効性と忍容性(全ての試験を対象)

うつ病治療における抗うつ薬の有効性と忍容性(全ての試験を対象)

この解析ではトリプタノールがアナフラニールによりも有効性と忍容性が高い結果でした。

トリプタノールのアナフラニールの薬理作用

トリプタノールはセロトニンとノルアドレナリンに対してバランス良く作用します。

図には示しませんでしたが、ヒスタミンH1を阻害する作用が非常に強いです。

アナフラニールはトリプタノールと同程度のノルアドレナリンに対する作用を持ちつつ、セロトニンへ強い作用を持っているのが特徴です。

トリプタノールとアナフラニールはいずれも抗コリン作用が強いです 2)(図3)。

図3 トリプタノールのアナフラニールの薬理作用の比較

トリプタノールのアナフラニールの薬理作用の比較

アミトリプチリン(トリプタノール)について

トリプタノールの保険適応はうつ病・うつ状態、夜尿症、末梢神経障害性疼痛となっています。

神経疼痛に有効であり 3)、2016年に末梢神経障害疼痛の効果・効能が追加となりました。

また、繰り返す緊張型頭痛、片頭痛の予防薬としても有効で、うつ病と緊張型頭痛、片頭痛が併存している場合に使用されることがあります。

日本以外にもヨーロッパ、アメリカなどの各国の学会のガイドラインでも推奨されています 4)、5)(図4、5)。

図4 EFTAガイドライン

EFTAガイドライン

図5 AANガイドライン

AANガイドライン

クロミプラミン(アナフラニール)について

アナフラニールの保険適応はうつ病・うつ状態、遺尿症、ナルコレプシーに伴う情動脱力発作となっています。

アナフラニールはSSRI登場以前に強迫症(強迫性障害)への効果が高かったことから、強迫症(強迫性障害)に使用される機会が多くありました。

現在でもSSRIでの効果が得られない時、アナフラニールが使用されることがあります。

小児の強迫症(強迫性障害)におけるSSRIとアナフラニールの治療効果を比較した解析では、アナフラニールの効果が優れていたとする報告もあります 6)(図6)。

(ただしデータの結果については慎重な吟味が必要なこと、副作用があることからSSRIが第1選択であることにかわりないことを論文の筆者らは記載しています)。

図6 小児の強迫症(強迫性障害)に対するSSRIとアナフラニールの効果の比較

小児の強迫症(強迫性障害)に対するSSRIとアナフラニールの効果の比較

副作用

トリプタノール、アナフラニールいずれも抗うつ薬の中では躁転のリスク、てんかんのリスクが高く、素因がある際は注意が必要です 7)、8)。

トリプタノールはヒスタミンH1阻害作用が強く、使用開始時は眠気が強く出やすい点に注意が必要です。

アナフラニールはセロトニンへの作用が強いので増量時にはセロトニン症候群に注意が必要です。

三環系抗うつ薬は不整脈、尿が出にくい、眼圧が高いなどの病気を持っている場合は悪化することがあるので慎重に使用する必要があります。

また口の渇きや便秘などにも注意が必要です。

口の渇きに関しては唾液分泌の低下を通じて、虫歯が増えたり、歯周病が悪化することがあるためこまめに口腔内ケアをする必要があります。

文献

  • 1)Cipriani A, et al. : Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis. Lancet, 391 : 1357-1366, 2018.
  • 2)Richelson E. : Pharmacology of antidepressants--characteristics of the ideal drug. Mayo Clin Proc, 69 : 1069-81, 1994.
  • 3)Finnerup NB, et al. : Pharmacotherapy for neuropathic pain in adults: a systematic review and meta-analysis. Lancet Neurol, 14 : 162-73, 2015.
  • 4)Bendtsen L, et al. : EFNS guideline on the treatment of tension-type headache - report of an EFNS task force. Eur J Neurol, 17 : 1318-25, 2010.
  • 5)Silberstein SD, et al. : Evidence-based guideline update: pharmacologic treatment for episodic migraine prevention in adults: report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology and the American Headache Society. Neurology, 78 : 1337-45, 2012.
  • 6)Varigonda AL, et al. : Systematic Review and Meta-Analysis: Early Treatment Responses of Selective Serotonin Reuptake Inhibitors and Clomipramine in Pediatric Obsessive-Compulsive Disorder. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry, 55 : 851-859, 2016.
  • 7)Koszewska I, Rybakowski JK. : Antidepressant-induced mood conversions in bipolar disorder: a retrospective study of tricyclic versus non-tricyclic antidepressant drugs. Neuropsychobiology, 59 : 12-6, 2009.
  • 8)Steinert T, Fröscher W. : Epileptic Seizures Under Antidepressive Drug Treatment: Systematic Review. Pharmacopsychiatry, 51 : 121-135, 2018.

うつ病の関連コラム

執筆者:高津心音メンタルクリニック 院長 宮本浩司

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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