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脳卒中後うつ病に対する
抗うつ薬の有効性の比較

公開日 2022.12.13

はじめに

脳卒中後の2年以内のうつ病の発症率は11~41%と高いことが報告されています。

発症メカニズムには以下の要因が考えられていますが、現時点で一貫したメカニズムの特定には至っていません1)。

  • 視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の機能障害
  • 炎症因子の増加
  • モノアミンレベルの低下
  • グルタミン酸を介した興奮毒性
  • 異常な神経栄養性の反応

薬物治療では抗炎症作用、神経新生作用が期待できるSSRIが治療の選択肢として、一定の支持を得ていました2)。

現在までのエビデンス

Sun Yらは2017年に脳卒中後うつ病に対する抗うつ薬の有効性と忍容性の比較の解析を報告しました。

結果はパロキセチン(パキシル・パキシルCR)が、有効性と忍容性で最も優れている結果でした3)、(図1)。

図1 脳卒中後うつ病に対する抗うつ薬の有効性と忍容性の比較(Sun et al., 2017)

(図中のレボキセチン、ドキセピン、シタロプラム、ネフィラセタム、フルオキセチンは日本未承認)

その後、2018年にDeng Lらが同じく脳卒中後うつ病に対する抗うつ薬の有効性と忍容性の比較の解析を行い、Sun Yらの研究結果と同様に、パロキセチンの有効性が最も高かったことを報告しています4)。

同年にQin Bらも解析を行い、この解析ではパロキセチンの推奨度は低いとしながらも、プラセボと比較し、ドキセピン(日本未承認)、パロキセチン(パキシル・パキシルCR)、ノルトリプチリン(ノリトレン)がプラセボより有効な結果でした。

これらの3件の研究結果から、脳卒中後うつ病に対する抗うつ薬の選択では、パロキセチン(パキシル・パキシルCR)が有力な選択肢となっていました。

最新のエビデンス

上記3件の研究に含まれた研究対象者数と試験(RCT)数はそれぞれ以下で多いものではありませんでした。

  • Sun Y. 2017:研究対象者数707人、試験12件
  • Deng L. 2018:研究対象者数876人、試験15件
  • Qin B. 2018:研究対象者数949人、試験14件

Li XとZhang Cは2020年に上記3件の解析に含まれていなかった、ミルタザピン(リフレックス・レメロン)、エスシタロプラム(レクサプロ)、アミトリプチリン(トリプタノール)を新たに比較に組み込んだ、研究対象者数5,547人、試験数51件を含む、脳卒中後うつ病に対する抗うつ薬の有効性の比較を行いました。

結果は以下の順に有効性が高い結果でした6)、(図2)。

図2 脳卒中後うつ病に対する抗うつ薬の効果の比較(Li X, Zhang C., 2020)

今回の研究ではミルタザピン(リフレックス・レメロン)、エスシタロプラム(レクサプロ)が組み込まれ、従来有効性が高いとされたパロキセチン(パキシル・パキシルCR)よりもミルタザピン、エスシタロプラムの有効性が高い結果でした。

この結果から脳卒中後うつ病に対する抗うつ薬の選択では、現在ミルタザピン、ベンラファキシン、エスシタロプラムも有力な選択肢になっています。

漢方薬のエビデンス

漢方(厳密には中国漢方)を抗うつ薬と併用した治療では抗うつ薬単剤より有効率が高かったことが報告されています7)。

解析結果のエビデンスは非常に低いから中程度となるも、柴胡加竜骨牡蛎湯の脳卒中後うつ病に対する単剤治療及び抗うつ薬との併用の有効性が示唆されています8)。

脳卒中後うつ病の発症要因の一つに視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の機能障害が大きく関与していることが想定されています9)。

柴胡加竜骨牡蛎湯は前頭前野のグルココルチコイド受容体の減少を是正し、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の機能障害を改善することが報告されており10)、(図3)、これらの薬理作用を介し、うつ症状の改善につながっていると想定されます。

図3 柴胡加竜骨牡蛎湯の薬理効果

文献

  • 1)Guo J, et al. : The advances of post-stroke depression: 2021 update. J Neurol, 269 : 1236-1249, 2022.
  • 2)Villa RF, et al. : Post-stroke depression: Mechanisms and pharmacological treatment. Pharmacol Ther, 184 : 131-144, 2018.
  • 3)Sun Y, et al. : Comparative efficacy and acceptability of antidepressant treatment in poststroke depression: a multiple-treatments meta-analysis. BMJ Open, 7 : e016499, 2017.
  • 4)Deng L, et al. : Efficacy and tolerability of pharmacotherapy for post-stroke depression: a network meta-analysis. Oncotarget, 9 : 23718-23728, 2018.
  • 5)Qin B, et al. : Efficacy, acceptability, and tolerability of antidepressant treatments for patients with post-stroke depression: a network meta-analysis. Braz J Med Biol Res, 51 : e7218, 2018.
  • 6)Li X, Zhang C. : Comparative efficacy of nine antidepressants in treating Chinese patients with post-stroke depression: A network meta-analysis. J Affect Disord, 266 : 540-548, 2020.
  • 7)Zhang H, et al. : Therapeutic effect of Chinese herbal medicines for post-stroke depression: A meta-analysis of randomized controlled trials. Medicine (Baltimore), 100 : e24173, 2021.
  • 8)Kwon CY, et al. : Efficacy and safety of Sihogayonggolmoryeo-tang (Saikokaryukotsuboreito, Chai-Hu-Jia-Long-Gu-Mu-Li-Tang) for post-stroke depression: A systematic review and meta-analysis. Sci Rep, 9 : 14536, 2019.
  • 9)Zhou L, et al. : The etiology of poststroke-depression: a hypothesis involving HPA axis. Biomed Pharmacother, 151 : 113146, 2022.
  • 10)田平 武. : 柴胡加竜骨牡蛎湯の薬理作用. 脳21, 4 : 326-331, 2015.

うつ病の関連コラム

執筆者:高津心音メンタルクリニック 院長 宮本浩司

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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