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双極性障害うつ状態の薬物治療
最新の比較

公開日 2023.11.20

2023年10月Yildizらにより、急性期の双極性障害うつ状態に対する最新の薬剤の有効性と忍容性の比較解析が発表されました1)。

主要評価項目である有効性の解析では、科学的な根拠の質は中等度の評価として、以下の順に薬剤の有効性が示されました。

図1 双極性障害うつ状態に対する薬剤の有効性の比較(中等度の科学的根拠)

双極性障害うつ状態に対する薬剤の有効性の比較(中等度の科学的根拠)

日本での承認薬はクエチアピン、オランザピン、ルラシドン、ラモトリギンでおおむね従来の結果2)、3)と大きく変わりない結果でした。

ルラシドンが登場したことで、それまでクエチアピンとオランザピンが糖尿病で使用できなかったり、眠気が強くでて使用できなかった患者さんも、うつ状態の治療が前進するようになりました。

しかし、反応が不十分な場合やアカシジアなどの副作用が強く生じる場合には、治療に難渋する場合もあります。

今回の解析では、科学的根拠は低いものの、以下の薬剤の有効性が示されました。

図2 双極性障害うつ状態に対する薬剤の有効性の比較(科学的根拠の低いもの)

双極性障害うつ状態に対する薬剤の有効性の比較(科学的根拠の低いもの)

医薬薬品のユビデカレノンは、ドラッグストアで販売されているコエンザイムQ10と同じものです。

プラミペキソールとユビデカレノン(コエンザイムQ10)は急性期の双極性障害うつ状態の補助薬物治療での有効性も報告されています4)。

図3 双極性障害うつ状態に対する補助薬物治療における薬剤の有効性の比較

双極性障害うつ状態に対する補助薬物治療における薬剤の有効性の比較

現在までの報告と今回の解結果を踏まえると、第1選択とされるクエチアピン、ルラシドンで反応不十分な場合等には、プラミペキソールやコエンザイムQ10による増強療法の選択も検討されます。

今回の解析のもう一つの主要評価項目である、躁転のしにくさでは、従来の結果2)と同様にクエチアピンが優れている結果でした。

参考

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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