高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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ルラシドン(ラツーダ)
について

公開日 2022.1.18

特性

ラツーダはドパミンD2受容体、セロトニ5-HT2A受容体及び 5-HT7受容体に対してはアンタゴニスト(拮抗作用)、5-HT1A受容体に対してはパーシャルアゴニスト(部分作動作用)として作用する非定型抗精神病薬で、統合失調症の精神症状と双極性障害のうつ症状に対する効果が認められています。

5-HT1A受容体パーシャルアゴニストは抗不安作用、抗うつ作用、認知機能の改善の効果を有するとされています 1)、2)、3)、4)。

5-HT1A受容体パーシャルアゴニスト及びアゴニストは脳内で機能的に活性化している受容体に優先して結合することがPET画像の研究で報告されており、この機能はうつ、認知機能障害の改善に関わることが示唆されています 5)、(図1)。

図1 5-HT1A受容体アンタゴニストとアゴニストPET画像の比較

5-HT1A受容体アンタゴニストとアゴニストPET画像の比較

5-HT1A受容体パーシャルアゴニスト及びアゴニストを有する向精神薬には抗不安薬にタンドスピロン(セディール)、ブスピロン(バスパー;日本未承認)、抗うつ薬にボルチオキセチン(トリンテリックス)、抗精神病薬にアリピプラゾール(エビリファイ)、ブレクスピプラゾール(レキサルティ)、ペロスピロン(ルーラン)、クエチアピン(セロクエル)の主要代謝産物のノルクエアピン、クロザピン(クロザリル)などがあります(図2)。(トリンテリックス、クロザリルは5-HT1Aアゴニスト作用を有しています。5-HT1Aアゴニスト作用も抗不安作用、抗うつ作用を有します。)

図2 各薬剤の5-HT1Aパーシャルアゴニスト及びアゴニストの作用の強さ

各薬剤の5-HT1Aパーシャルアゴニスト及びアゴニストの作用の強さ

5-HT7受容体アンタゴニストは抗うつ作用、認知機能の改善の効果、睡眠、覚醒への作用等を有するとされています 6)。

また、5-HT1A受容体と5-HT7受容体はそれぞれ相互作用をもたらし、うつ、不安の病態の改善に関与している可能性が指摘されています 7)。

ラツーダにおいても相互作用で前頭前野と海馬のドパミン放出を増加させ、認知機能の改善に関与している可能性が報告されています 8)。

眠気や食欲増加をきたすヒスタミンH1受容体阻害作用や便秘や口の渇きに影響するムスカリンM1受容体阻害作用は弱いことが分かっています。

効能・効果

効能・効果は「統合失調症」及び「双極性障害におけるうつ症状の改善」で承認を得ています。

統合失調症、双極性障害のうつ症状のいずれも内服開始後2週間で効果が現れます 9)、(図3)。

図3 ルラシドン(ラツーダ)の効果発現までの期間

ルラシドン(ラツーダ)の効果発現までの期間

用法・用量

統合失調症では通常、成人にはルラシドン塩酸塩として40mgを1日1回食後経口投与する。

なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は80mgを超えないこととなっています。

双極性障害におけるうつ症状の改善では、通常、成人にはルラシドン塩酸塩として20 ~ 60mgを1日1回食後経口投与する。

なお、開始用量は20mg、増量幅は1日量とし20mgとし、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は60mgを超えないこととなっていす。

薬物動態

食後に内服すると血液中の濃度は約1.5時間で最高濃度に達し、約22時間後に血液中の濃度は半分に下がります。

一方、空腹時に内服すると最高濃度到達時間は約1.5時間と同様ですが、薬剤の血中濃度は食後内服と比較し低く、約16時間で血液中の濃度が半分に下がってしまいます(図4)。

そのため、内服時間は食後と設定されています。

図4 ルラシドン(ラツーダ)の血中濃度の推移

ルラシドン(ラツーダ)の血中濃度の推移

剤形

剤形には20mg錠、40mg錠、60mg錠、80mg錠があります(図5)。

図5 ルラシドン(ラツーダ)の剤形

ルラシドン(ラツーダ)の剤形

副作用

ラツーダはアカシジア(じっとしていられない感、手足がムズムズする感が生じる症状)が生じる頻度が高い傾向にあります 10)、11)。

これはヒスタミンH1受容体阻害作用、ムスカリンM1受容体阻害作用が弱いためで、代謝や認知機能への影響が少ない利点の裏返しでもあります。

また、嘔気が生じることもあります。これらは副作用対策を行うことで対処が可能です。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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