高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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ラモトリギン(ラミクタール)
の特徴・作用・副作用

公開日 2023.6.26

作用・特徴

ラモトリギン(先発医薬品:ラミクタール)は、てんかん発作と双極性障害うつ状態の再燃・再発を抑制する効果がある薬です1)、(図1)。

図1 双極性障害うつ状態(うつ病エピソード)の再燃・再発抑制における各薬剤の有効性

双極性障害うつ状態(うつ病エピソード)の再燃・再発抑制における各薬剤の有効性

てんかんでは特に部分発作に対し、カルバマゼピン(先発医薬品:テグレトール)と並び有効性が示されており、ガイドラインでも第1選択薬の一つに挙げられています2)、3)。

急性期の双極性障害うつ状態に対しても、単剤及び他の薬剤との併用における有効性が報告されています4)、5)。

SSRIのみで改善が不十分な強迫性障害に対して、SSRIへの増強療法(薬剤を追加して効果を高める治療法です)として有効なことが報告されています6)、(図2)。

図2 強迫性障害に対するSSRIへの増量療法の各薬剤の有効性の比較

強迫性障害に対するSSRIへの増量療法の各薬剤の有効性の比較

てんかん発作の抑制では、主に神経細胞のナトリウムイオンチャネルを阻害し、グルタミン酸放出を抑制し、ニューロンの興奮を低下させることが、作用機序として考えられています7)。

双極性障害うつ状態の改善には、主にシナプス後膜のAMPAグルタミン酸受容体機能を調整し、グルタミン酸作動系を調節することが関与していると考えられています7)、(図3)。

図3 ラモトリギンの作用機序

ラモトリギンの作用機序

開発経緯

抗てんかん薬のカルバマゼピン(先発医薬品:テグレトール)やフェニトイン(先発医薬品:アレビアチン、ヒダントール)などは、葉酸の代謝阻害作用があることがわかっていました。

そこで、葉酸阻害作用を有し、抗マラリア薬として使用されていたピリメタミン(日本ではスルファドキン・ピリメタミン合剤が発売されています)から抗てんかん薬が合成できると考え、Wellcome Foundation社(現グラクソ・スミスクライン社)の研究者によって開発されました7)。

そのため、ピリメタミンとラモトリギンは似た化学構造式となっています(図4)。

図4 ピリメタミンとラモトリギンの化学構造式

ピリメタミンとラモトリギンの化学構造式

剤型

剤型は25mg錠と100mg錠があります(図5)。

小児用に2mg錠と5mg錠もあります。

図5 ラミクタール(先発医薬品:ラミクタール)の剤型(25mg・100mg錠)

ラミクタール(先発医薬品:ラミクタール)の剤型(25mg・100mg錠)

効能・効果

保険承認における効能・効果は以下となっています。

てんかん患者の下記発作に対する単剤療法
他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の下記発作に対する抗てん
双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制

用法・用量

ラモトリギンは皮疹を生じるリスクがあり少量から投与を開始し、漸増する設定が決められています(図6、7)。

図6 ラモトリギンの投与法①

ラモトリギンの投与法①

図7 ラモトリギンの投与法②

ラモトリギンの投与法②

てんかん治療では血中濃度2.5~15μg/mLが治療濃度域とされています3)。

双極性障害に対しては血中濃度と治療効果に対する相関は現在のところ見出されていません8)。

薬物動態

1日1回25~200mgを単回で内服した際の血液中の濃度は、約1.7~2.5時間で最高濃度に達し、約31~38時間後に半分に下がります(図8)。

図8 ラモトリギンを1回内服した際の血中濃度の推移

ラモトリギンを1回内服した際の血中濃度の推移

血中ラモトリギン濃度は内服量の増量に伴い、線形に上昇します(図9)。

図9 ラモトリギン血中濃度と内服量の関係

ラモトリギン血中濃度と内服量の関係

ラモトリギンは肝臓での初回通過効果をほとんど受けず、グルクロン酸転移酵素(主にUGT1A4)で代謝されます。

バルプロ酸(先発医薬品:デパケン、デパケンR、バレリン、セレニカR)を併用すると、バルプロ酸の代謝もグルクロン酸抱合のため、代謝が拮抗し、ラモトリギンの血中濃度が上昇し、半減期が延長します。

カルバマゼピン(先発医薬品:テグレトール)を併用すると、グルクロン酸抱合が促進されるため、ラモトリギンの血中濃度が低下します。

そのため、上述の用法・用量が設定されています。

副作用

双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制に対する使用成績調査では、989例中237(23.96%)に副作用が認められ、主な副作用は以下でした(図10)。

図10 ラモトリギンの主な副作用

ラモトリギンの主な副作用

重大な副作用に、皮膚症状を伴う以下の副作用が挙がられています。

中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)では、HLA-B*1502、HLA-A*2402が関連していると報告されています9)~11)。

(HLAはヒトの白血球に存在する抗原で特定の疾患と関連することがわかっています。代表的なものにベーチェット病とHLA-B 51の関連があります。)

日本人では、HLA-B*1502の保有率が低く、HLA-A*2402は60~70%が保有していることから、HLA-A*2402との関連が示唆されます。

他に汎血球減少(白血球、赤血球、血小板数の減少)も挙げられています。

妊娠中の使用による胎児への催奇形性のリスクは低いとされているものの、出産後の児の自閉スペクトラム症のリスクを高めることが報告されています12)、13)。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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