高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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PTSD(心的外傷後ストレス障害)に
対する薬物治療 最新の比較

公開日 2022.3.15

PTSDに対する治療は心理療法ではEMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing;眼球運動により脱感作と再処理法)、TF-CBT(Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy;トラウマフォーカスト認知行動療法)が有効であり 1)、多くのガイドラインで心理療法の第一選択となっています 2)。

薬物治療ではSSRIが第一選択となっています。

2022年3月Williams, T.らはPTSDに対する薬物治療の効果を解析し、報告しています 3)。

解析では、SSRIが有効であり、他に三環系抗うつ薬のアミトリプチリン(トリプタノール)、ミルタザピン(リフレックス・レメロン)の効果もみられる結果でした(図1)。

図1 PTSDに対する薬物治療の比較①

PTSDに対する薬物治療の比較①

上記SSRI間で比較するとフルオキセチン(日本未承認)に続いてセルトラリン(ジェイゾロフト)が有効性と忍容性で優れていました(図2)。

図2 PTSDに対する薬物治療の比較 SSRI間での比較

PTSDに対する薬物治療の比較 SSRI間での比較

2020年にde Moraes Costa, G.らが報告したPTSDに対する薬物治療の効果と忍容性を比較した解析では、有効性ではグルタミン酸抑制薬のトピラマート(トピナ)が最も有効であり、それに続き第2抗精神病薬のリスペリドン(リスパダール)、クエチアピン(セロクエル、ビプレッソ)、抗うつ薬(SSRI及びSNRI)のパロキセチン(パキシル)、ベンラファキシン(イフェクサーSR)、フルオキセチン(日本未承認)、セルトラリン(ジェイゾロフト)が有効な結果でした 4)、(図3)。

これらの薬剤とプラセボで忍容性に差は出ない結果でした。

図3 PTSDに対する薬物治療の比較②

PTSDに対する薬物治療の比較②

Williams, T.らの最新の解析結果とは異なるものの、PTSDでは併存症を考慮した薬剤選択も重要で特にPTSDと双極性障害の併存では自殺率が高いことから、より慎重な薬剤選択が必要になることをde Moraes Costa, G.らも考察の中で指摘しています。

その意味でde Moraes Costa, G.らの結果も薬剤の選択に示唆を与えてくれます。

薬物治療ではSSRIを基準にそれぞれの背景や併存症を考慮した薬剤選択による治療が必要となります。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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