公開日 2025.8.25
作用・特徴
トラゾドン(デジレル・レスリン)は、1971年にイタリアで開発された抗うつ薬です。
その後、米国、日本をはじめ多くの国で使用されています。
トラゾドンは抗うつ薬の作用として、SSRIと同じ、セロトニンの再取り込みを阻害し作用を有しています。
それに加え、セロトニン受容体のうち5-HT2A、5-HT2Cをブロックする作用(アンタゴニスト)も有しています1)。
このことから、SSRIと区別して、SARI(Serotonin Antagonist and Reuptake Inhibitor: セロトニンアンタゴニスト-再取り込み阻害剤)とも呼ばれます。
セロトニン再取り込み作用に加え、セロトニン5-HT2A、5-HT2C受容体阻害作用を介した、ドパミン系を調整する作用で抗うつ作用を発揮します1)、(図1)。
図1 トラゾドンの抗うつ薬としての作用機序
抗うつ効果は100mg以上で得られるとされています1)。
トラゾドンは低用量では、セロトニン再取り込み阻害作用の効果は弱まり、他にもともと有しているセロトニン5-HT2A受容体、ヒスタミンH1受容体、アドレナリンα1受容体阻害効果は維持されます。
セロトニン5-HT2A受容体、ヒスタミンH1受容体、アドレナリンα1受容体阻害作用はいずれも睡眠に関与します1)。
図2 トラゾドンの不眠治療薬としての模式図
トラゾドンの睡眠への効果は主に以下の3点があげられます2)。
① 寝つきの悪さの改善
② 夜間目が覚めてしまうことの改善
③ 深い睡眠がえられること
特に②、③にはトラゾドンのセロトニン5-HT2A受容体阻害作用が関与しているとされています3)。
眠気が強いことから、抗うつ薬ではなく、不眠症治療薬として長い間使用されています。
依存・耐性がないことや、閉塞性睡眠時無呼吸症候群でも使用できる等のメリットがあります4)。
また25mgから200mgまで幅広く用量調整可能な点も利点といえます。
効能・効果
保険承認における効能・効果は「うつ病・うつ状態」です。
不眠症への治療以外に、せん妄への有効性も報告されています5)。
用法・用量
用法・用量は、通常、成人では、1日75~100 mgを初期用量とし、1日200 mgまで増量し、1~数回に分割し、内服する。なお、年齢、症状により適宜増減するとなっています。
不眠症で使用する場合は、通常は25~50mgを就寝前に開始し、睡眠状態の経過をみて、用量を調整します。
剤型
剤型は25mg錠と50mg錠があります。
図3 トラゾドン(レスリン)の剤型
薬物動態
トラゾドン50mgを1回内服した際の血中濃度は、約2.6時間後に最高濃度に達し、約6.4時間に半減します。
図4 トラゾドン50mgを内服した際の血中濃度の推移
トラゾドンは主にCYP3A4及びCYP2D6で代謝されると考えられています。
副作用
承認時までの調査による1%以上の副作用は以下でした。
- めまい・立ちくらみ・ふらつき(9.52%)
- 眠気(8.17%)
- 口渇(6.25%)
- 便秘(3.94%)
- 倦怠感(1.83%)
- 嘔気・嘔吐(1.15%)
- 頭痛・頭重(1.06%)
図5 トラゾドン(レスリン)の副作用
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まずはかかりつけ内科等で相談するのも1つの方法です。
文献
- 1) Stahl SM.: Mechanism of action of trazodone: a multifunctional drug. CNS Spectr, 14: 536-46, 2009.
- 2) Zheng Y, et al.: Trazodone changed the polysomnographic sleep architecture in insomnia disorder: a systematic review and meta-analysis. 12: 14453, 2022.
- 3) Vanover KE, Davis RE.: Role of 5-HT2A receptor antagonists in the treatment of insomnia. Nat Sci Sleep, 2:139-50, 2010.
- 4) Nobre ML, et al.: Pharmacological treatment for obstructive sleep apnea: A systematic review and meta-analysis. Clinics (Sao Paulo), 79:100330, 2024.
- 5) Kawano S, et al.: Trazodone and Mianserin for Delirium: A Retrospective Chart Review. J Clin Psychopharmacol, 42: 560-564, 2022.
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