公開日 2025.11.21
はじめに
アパシーは、一般に「無気力」ともよばれています。
うつ病の症状として生じることもありますが、うつ状態とアパシーは疾患の単位として区別されており、うつ病でない高齢者にアパシーのみが生じることもあります。
また、うつ病以外のさまざまな疾患で生じることもわかっています1)~7)、(図1)。
図1)アパシーの発症頻度が高い疾患

定義・症状
アパシーは、一次的な運動・感覚障害、薬物中毒、身体疾患などによらない「自発的な目標指向行動の低下」とされています1)。
単一の症候群ではなく、いくつかの側面に分類されます。
行動的アパシー(Behavioral apathy)
自発的な身体的活動や日常生活動作を始めたり維持したりする意欲の低下。
認知的アパシー(Cognitive apathy)
自発的な思考や知的好奇心の低下、問題解決への関心の低下、認知的に挑戦的な活動への意欲の減退。
情動的アパシー(Emotional apathy / emotional blunting)
共感や自発的感情、感情反応性、感情の強さの低下。
社会的アパシー(Social apathy)
社会的活動や対人交流への自発的関与の低下。
これらの活動低下は、患者のこれまでの機能水準と比較して明確な低下として認められる必要があるとされています1)。
原因
アパシーでは、脳内のノルアドレナリン作動性神経伝達系の機能障害の関与が示唆されています2)。
一方、アンヘドニアはドパミンの機能障害が関与しているとされています3)、(図2)。
図2)モノアミンとアパシー・アンヘドニアの関係

治療
ノルアドレナリン作動性神経伝達系の機能障害の関与が示唆されていることから、うつ病に伴うアパシーでは、ノルアドレナリン作動性の機序を有する抗うつ薬(SNRIなど)が有効とされています4)。
アルツハイマー型認知症に伴うアパシーでは、以下の薬剤が有効とされています(日本未承認薬を除く)、5)。
- メチルフェニデート(コンサータ)
- オランザピン(ジプレキサ)
- コリンエステラーゼ阻害薬
- メマンチン(メマリー)
パーキンソン病に伴うアパシーでは、以下の薬剤が有効とされています5)。
- メチルフェニデート
- ロチゴチン(ニュープロパッチ)
- リバスチグミン(リバスタッチ・イクセロン)
高齢者のアパシーでは、運動も有効とされており13)、運動やレクリエーション、音楽療法なども検討されます。
まとめ
アパシーはさまざまな疾患で生じますが、見落とされやすい傾向にあります。
一方で、心血管疾患のリスクが高くなることなどが報告されています14)。
そのため、慎重な観察を行い、治療につなげていくことが必要と考えられます。
文献
- 1) Yu JJ, et al.: The prevalence of apathy in Lewy body dementia: A systematic review and meta-analysis. Alzheimers Dement, 21: e70425, 2025.
- 2) Zhao QF, et al.: The prevalence of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer's disease: Systematic review and meta-analysis. J Affect Disord, 190:264-271, 2016.
- 3) Gu L, et al.: Prevalence, contributing factors, and clinical impact of apathy in Parkinson's disease. J Psychiatr Res, 191:382-392, 2025.
- 4) Clark ML, et al.: A systematic review and meta-analysis of depression and apathy frequency in adult-onset Huntington's disease. Neurosci Biobehav Rev, 149:105166, 2023.
- 5) Lynch J, et al.: Prevalence and moderators of apathy after traumatic brain injury: A systematic review and meta-analysis. Neuropsychol Rehabil, 25:1-21, 2025.
- 6) Groeneweg-Koolhoven I, et al.: Apathy in Older Persons With Depression: Course and Predictors: The NESDO Study. J Geriatr Psychiatry Neurol, 29: 178-86, 2016.
- 7) Zhang H, et al.: The prevalence of apathy in stroke patients: A systematic review and meta-analysis. J Psychosom Res, 173:111478, 2023.
- 8) Chong TT.: Definition: Apathy. Cortex, 128:326-327, 2020.
- 9) Hezemans FH, et al.: Noradrenergic deficits contribute to apathy in Parkinson's disease through the precision of expected outcomes. PLoS Comput Biol, 18: e1010079, 2022.
- 10) Phillips RD, et al.: Striatal dopamine in anhedonia: A simultaneous [(11)C]raclopride positron emission tomography and functional magnetic resonance imaging investigation. Psychiatry Res Neuroimaging, 333: 111660, 2023.
- 11) Ishizaki J, Mimura M.: Dysthymia and apathy: diagnosis and treatment. Depress Res Treat, 2011:893905, 2011.
- 12) Azhar L, et al.: Pharmacological Management of Apathy in Dementia. CNS Drugs, 36: 143-165, 2022.
- 13) Jia H, et al.: The effect of physical exercise on apathy in older adults: a systematic review and meta-analysis. Front Public Health, 13:1617272, 2025.
- 14) Eurelings LS, et al.: Apathy and depressive symptoms in older people and incident myocardial infarction, stroke, and mortality: a systematic review and meta-analysis of individual participant data. Clin Epidemiol, 10:363-379, 2018.
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