高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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ADHDの薬
③メチルフェニデート(コンサータ)

公開日 2021.11.16

作用

メチルフェニデート(医薬品名:コンサータ)は脳内のドパミンとノルアドレナリントランスポーターに結合し、再取り込みを抑制し、シナプス間隙のドパミンとノルアドレナリンを増加させることにより、神経系の機能を高めることによりADHDの不注意や多動性を改善させると考えられています(図1)。

図1 メチルフェニデート(コンサータ)の薬理作用

メチルフェニデート(コンサータ)の薬理作用

特に脳の前頭前野と線条体という部位においてドパミンを増加させることと 1)、2)、(図2)、視床という部位を中心に広くノルアドレナリンを増加させることにより 3)、(図3)、数的タスクやワーキングメモリーの機能を高めることが示唆されています 4)。

図2 メチルフェニデート(コンサータ)によるドパミンの増加

メチルフェニデート(コンサータ)によるドパミンの増加

図3 メチルフェニデート(コンサータ)によるノルアドレナリンの増加

メチルフェニデート(コンサータ)によるノルアドレナリンの増加

剤形

剤形では18mg錠、27mg錠、36mg錠があります(図4)。

図4 メチルフェニデート(コンサータ)の剤形

メチルフェニデート(コンサータ)の剤形

用法・用量

18歳未満では、通常、メチルフェニデート塩酸塩として18mgを初回用量、18~45mgを維持用量として、1日1回朝経口投与する。

増量が必要な場合は、1週間以上の間隔をあけて1日用量として9mg又は18mgの増量を行う。

なお、症状により適宜増減する。ただし、1日用量は54mgを超えないこととされています。

18歳以上では、通常、18歳以上の患者にはメチルフェニデート塩酸塩として18mgを初回用量として、1日1回朝経口投与する。

増量が必要な場合は、1週間以上の間隔をあけて1日用量として9mg又は18mgの増量を行う。なお、症状により適宜増減する。

ただし、1日用量は72mgを超えないこととされています。

薬物動態

コンサータは浸透圧を利用した放出制御システム(OROS)によるフィルムコート錠(徐放錠)で内服後、一旦すみやかに血液中のメチルフェニデート濃度が上昇し、その後内部充填された薬物が浸透圧変化で徐々に放出されることにより緩やかな上昇します。

即効性と約12時間の効果の持続性を有します(図5)。

図5 メチルフェニデート(コンサータ)の血中濃度

メチルフェニデート(コンサータ)の血中濃度

副作用

成人を対象とした承認時の副作用では、主なものとして、食欲減退108例(39.7%)、動悸59例(21.7%)、体重減少54例(19.9%)、不眠症49例(18.0%)、悪心45(16.5%)、口渇40例(14.7%)、頭痛29例(10.7%)が報告されています(図6)。

図6 メチルフェニデート(コンサータ)の副作用(成人)

メチルフェニデート(コンサータ)の副作用(成人)

小児を対象とした承認時の副作用では、主なものとして、食欲減退91例(42.1%)、不眠症40例(18.5%)、体重減少26例(12.0%)、頭痛18 例(8.3%)、腹痛12(5.6%)、悪心12例(5.6%)、チック11例(5.1%)、発熱11例(5.1%)が報告されています(図7)。

図7 メチルフェニデート(コンサータ)の副作用(小児)

メチルフェニデート(コンサータ)の副作用(小児)

注意点

上記に該当する際は投与が禁止となっています。

コンサータは中枢刺激作用を有するため、午後の内服は不眠をきたすため、朝に内服する必要があります。

また依存性をリスクがあるため適宜休薬期間の設定が必要です。

小児にでは成長期に合わせた適切な体重増加の抑制が生じることがあり、体重の観察を要します5)。

血圧上昇や脈拍に影響がでることがあり6)、注意が必要です。

SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤:デュロキセチン「サインバルタ」、ベンラファキシン「イフェクサーSR」など)やアトモキセチン(ストラテラ)との併用ではノルアドレナリンの効果が強まるため注意が必要です。

三環系抗うつ薬、SSRI(エスシタロプラム「レクサプロ」、セルトラリン「ジェイゾロフト」など)との併用では三環系抗うつ薬、SSRIの作用が強まるためことがあり、用量調整や観察が必要です。

他のADHD治療薬との使い分け

チックがある場合や易怒性、攻撃性が生じている場合はメチルフェニデート(コンサータ)で悪化する可能性があり、改善効果も期待できるインチュニブの使用が選択肢となります。

不安が強い場合、小児ではメチルフェニデート(コンサータ)もアトモキセチン(ストラテラ)もADHDと不安を軽減する報告があり 7)、いずれも選択肢になります。

一方、成人では、動物実験でメチルフェニデートは不安の悪化があり 8)、また全体としてはアトモキセチンが効果的である報告がなされており 9)、アトモキセチンの選択が好ましいと考えられます。

非中枢刺激薬のアトモキセチン、インチュニブで治療を開始して十分な効果が得られない際は慎重にコンサータへの切り替えを検討します。

文献

ADHD(注意欠如・多動症)の薬の関連コラム

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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