公開日 2025.09.29
効果・作用
グアンファシン(インチュニブ)は前頭前皮質にある錐体細胞の後シナプスに存在し、アドレナリンの受容体であるα2A受容体を選択的に刺激することで、cAMPの産生が阻害されて、HCNチャネルが閉じ、前島前皮質におけるグルタミン酸によるシグナル伝達を増強させることが、ADHDの症状の改善に関与しているとされています1)、(図1)。
図1 インチュニブの作用
また、前島前皮質ではノルアドレナリンの放出が少なすぎても、多すぎても、シグナル伝達の減少につながるとされています。
インチュニブはα2A受容体に作用し、この間の適切なバランスを保つと考えられています(図2)。
図2 インチュニブの作用②
効能・効果
保険承認における効能・効果は「注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」となっています。
ADHD以外にも、ASDの過敏性や衝動性の治療にも有効であることが報告されています2)。
また、PTSDやPTSDに関連する悪夢にも効果あることがわかっています3)、4)。
現在、ASD、PTSD、他の疾患も含め研究が進められています(図3)。
図3 グアンファシン(インチュニブ)の治療対象
用法・用量
〈18 歳未満の患者〉
通常、体重 50kg未満の場合は1日1mg、体重50kg以上の場合は1日2mgより投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、下表の維持用量まで増量する。なお、症状により適宜増減するが、下表の最高用量を超えないこととし、いずれも1日1回経口投与することとなっています。
〈18 歳以上の患者〉
通常、1日2mgより投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、1日4~6mgの維持用量まで増量する。なお、症状により適宜増減するが、1日用量は6mgを超えないこととし、いずれも1日1回経口投与することとなっています。
剤型
錠剤で1㎎錠と3㎎錠があります(図4)。
図4 インチュニブの剤型
薬物動態
インチュニブ3mgを空腹時に内服すると、血中濃度は約5時間後に最高濃度に達し、約14時間後に半減します(図5)。
図5 インチュニブ3mgを内服した際の血中濃度の推移
毎日継続して内服すると、徐放性製剤(ゆっくり成分が放出される薬)ですので5日以内に一定の濃度に維持されます(図6)。
図6 グアンファシン(インチュニブ)の血中濃度(毎日内服)
禁忌
以下の禁忌が設定されています。
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 妊婦又は妊娠している可能性のある女性
- 房室ブロック(第二度、第三度)のある患者[本剤の中枢性の徐脈作用により症状が悪 化するおそれがある。]
併用注意
以下の薬剤は併用注意となっています。
CYP3A4/5 阻害剤:イトラコナゾール、リトナビル、クラリスロマイシン等
(本剤の血中濃度が上昇し、作用が増強するおそれがあるので、本剤を減量するなど注意すること。)
副作用
国内の臨床試験における5%以上の副作用(18歳以上)は以下でした(図7)。
- 傾眠(41.3%)
- 口渇(30.9%)
- 血圧低下(23.9%)
- 体位性めまい(19.6%)
- 徐脈(16.5%)
- 倦怠感(13.0%)
- 便秘(10.0%)
- 浮動性めまい(10.0%)
図7 インチュニブの主な副作用
他に頭痛(3.9%)なども報告されています。
ADHDではうつ病、双極性障害と同様に片頭痛の併存率が高いですが、内服後、頭痛が悪化することがあるので経過を慎重にみる必要があります5)、6)。
他のADHD治療薬との使い分け
血圧が高めの場合、アトモキセチン(ストラテラ)では血圧上昇のリスクがあるため、血圧低下が生じやすいインチュニブが選択肢となります。
もともとインチュニブは過去に国内で別の商品名で高血圧の治療薬として使用されていました。
ADHDやASD(自閉スペクトラム症)では悪夢を見やすい傾向があります7)、8)。
また、ADHDやASDではトラウマ体験やPTSDを併存しやすいことがわかっています7)。
インチュニブはPTSDや悪夢への効果もあるため、この場合も選択肢となります。
インチュニブは小児のADHDの反抗的行動の改善とASDの反復行動を改善させることが報告されています9)。
またASDに併存するADHD症状にも有効であることが報告されており10)、ADHDとASDが併存している場合は、選択肢となります。
インチュニブは血圧を下げると同時に鎮静作用もあり、双極性障害の併存例でも選択肢となります。
内服のポイント
眠気や血圧低下の副作用が生じやすいので寝る前に内服するのが望ましいです。
また血圧が低めの方で使用される場合は少量から開始し、効果と副作用のバランスをみながら慎重に増量するのが好ましいです。
おひとりで悩んでいませんか?

ミス、不注意等で生活や仕事に支障をきたしている場合は、早めに心療内科・精神科に相談することをおすすめします。
文献
- 1) Arnsten AF, Pliszka SR.: Catecholamine influences on prefrontal cortical function: relevance to treatment of attention deficit/hyperactivity disorder and related disorders. Pharmacol Biochem Behav, 99: 211-6, 2011.
- 2) Kaye AD, et al.: Efficacy and Safety of Alpha-2 Agonists in Autism Spectrum Disorder: A Systematic Review. Adv Ther, 41: 4299-4311, 2024.
- 3) Jagtiani A, et al.: Alpha-2 Agonists in Children and Adolescents With Post-traumatic Stress Disorder: A Systematic Review. Cureus, 16: e53009, 2024.
- 4) Khalid S, et al.: Comparison of alpha-2 agonist versus alpha-1 antagonist for post-traumatic stress disorder-associated nightmares in pediatric patients. Ment Health Clin, 14: 199-203, 2024.
- 5) Salem H, et al.: ADHD is associated with migraine: a systematic review and meta-analysis. Eur Child Adolesc Psychiatry, 27: 267-277, 2018.
- 6) Pan PY, et al.: Headache in ADHD as comorbidity and a side effect of medications: a systematic review and meta-analysis. Psychol Med, 12: 1-12, 2021.
- 7) Schredl M, et al.: Nightmare frequency in adults with attention-deficit hyperactivity disorder. Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci, 267: 89-92, 2017.
- 8) Mughal R, et al.: Nightmares in Children with Foetal Alcohol Spectrum Disorders, Autism Spectrum Disorders, and Their Typically Developing Peers. Clocks Sleep, 3: 465-481, 2021.
- 9) Politte LC, et al.: A randomized, placebo-controlled trial of extended-release guanfacine in children with autism spectrum disorder and ADHD symptoms: an analysis of secondary outcome measures. Neuropsychopharmacology, 43: 1772-1778, 2018.
- 10) Scahill L, et al.: Extended-Release Guanfacine for Hyperactivity in Children With Autism Spectrum Disorder. Am J Psychiatry, 172: 1197-206, 2015.
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