高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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ADHDの薬②
グアンファシン(インチュニブ)

公開日 2021.11.8

作用

グアンファシン(医薬品名:インチュニブ)は前頭前皮質にある錐体細胞の後シナプスに存在し、アドレナリンの受容体であるα2A受容体を選択的に刺激することで、シグナル伝達を増強させることにより、ADHDの症状を改善すると考えられています(図1)。

図1 グアンファシン(インチュニブ)の薬理作用

グアンファシン(インチュニブ)の薬理作用

ADHDでは前頭前野におけるドパミン、ノルアドレナリンの活性化が症状の改善に有効とされています 1)。

中でもドパミンD1受容体、アドレナリンα2A受容体はワーキングメモリーに関与しており、ノルアドレナリンα2A受容体はより認知機能への関わりが指摘されています 2)。

剤形

錠剤で1mg錠と3mg錠があります(図2)。

図2 グアンファシン(インチュニブ)の剤形

用法・用量

18歳未満では、通常、体重 50kg未満の場合はグアンファシンとして 1日1mg、 体重50kg以上の場合はグアンファシンとして1日2mgより投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、下表の維持用量まで増量する。

なお、症状により適宜増減するが、下表の最高用量を超えないこととし、いずれも1日1回経口投与することとなっています。

用法・用量一覧リスト

18歳以上では、通常、グアンファシンとして 1日2mgより投与を開始し、1週間以上の間隔をあけて1mgずつ、1日4~6mgの維持用量まで増量する。

なお、症状により適宜増減するが、1日用量は6mgを超えないこととし、いずれも1日1回経口投与することとなっています。

薬物動態

3mgを1回だけ内服すると5時間ほどで血液中の濃度が一番高い状態に達します。

その後、14時間ほどして半分の濃度に下がります(図3)。

図3 グアンファシン(インチュニブ)の血中濃度(1回内服)

毎日継続して内服すると、徐放性製剤(ゆっくり成分が放出される薬)ですので5日以内に一定の濃度に維持されます(図4)。

図4 グアンファシン(インチュニブ)の血中濃度(毎日内服)

副作用

国内の臨床試験における副作用(18歳以上)では傾眠が41.3%、血圧低下が23.9%、体位性めまい19.6%などが報告されています(図5)。

他に徐脈(16.5%)や頭痛(3.9%)なども報告されています。

図5 グアンファシン(インチュニブ)の副作用

注意点

血圧低下の副作用があるため、血圧が低めの場合は低血圧になったり、起立性低血圧が生じる可能性があり、慎重な使用が必要です。

開始時や増量時には血圧測定をすることが望ましいです。

また徐脈のリスクがあり、2度房室ブロック、3度房室ブロックがある場合、使用禁忌となっています。

房室ブロックだけでなく、不整脈がある場合は慎重な使用が必要です。

ADHDではうつ病、双極性障害と同様に片頭痛の併存率が高いですが、内服後、頭痛が悪化することがあるので経過を慎重にみる必要があります 3)、4)。

他のADHD治療薬との使い分け

血圧が高めの場合、アトモキセチン(ストラテラ)では血圧上昇のリスクがあるため、血圧低下が生じやすいグアンファシン(インチュニブ)が選択肢となります。

もともとグアンファシンは過去に国内で別の商品名で高血圧の治療薬として使用されていました。

ADHDやASD(自閉スペクトラム症)では悪夢を見やすい傾向があります 5)、6)。

また、ADHDやASDではトラウマ体験やPTSDを併存しやすいことがわかっています 7)。

グアンファシンはトラウマ関連症状に効果があることが報告されています 8)。

また、グアンファシンと同じ作用のクロニジンという薬はPTSDの悪夢に有効であることが報告されており9)、10)、トラウマやPTSDを伴う場合はグアンファシン(インチュニブ)が選択肢となります。

グアンファシンは小児のADHDの反抗的行動の改善とASDの反復行動を改善させることが報告されています 11)。

またASDに併存するADHD症状にも有効であることが報告されており 12)、ADHDとASDが併存している場合はグアンファシンが選択肢となります。

PTSD、ASDなど前頭前野の機能障害がかかわる疾患へグアンファシンへの効果が示唆され、現在研究が進められています(図6)。

図6 グアンファシン(インチュニブ)の治療対象

グアンファシン(インチュニブ)は血圧を下げると同時に鎮静作用もあり、双極性障害の併存でも選択肢となります。

内服のポイント

眠気や血圧低下の副作用が生じやすいので寝る前に内服するのが望ましいです。

また血圧が低めの方で使用される場合は少量から開始し、効果と副作用のバランスをみながら慎重に増量するのが好ましいです。

文献

ADHD(注意欠如・多動症)の薬の関連コラム

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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