高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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強迫性障害に対する薬物治療
最新の比較

公開日 2023.8.25

強迫症に対するSSRI及びアナフラニールの比較

2022年1月Tao, Y.らによって児童・青年の強迫症に対する薬物治療・心理療法及び薬物治療と心理療法の併用による治療効果を比較した解析結果が報告されました1)。

その中で薬物治療においては、エスシタロプラム(レクサプロ)が他のSSRI及びクロミプラミン(アナフラニール)より治療効果が優れている結果が示されました(図1)。

従来の研究では児童・青年及び成人の強迫症に対する各SSRIの治療の効果の差はなかったことから2)、3)、今回の結果は大きなインパクトがあります。

図1 児童・青年の強迫性障害に対する薬物治療の比較 SSRI及びアナフラニール間での比較

児童・青年の強迫性障害に対する薬物治療の比較 SSRI及びアナフラニール間での比較

抗精神病薬による増強療法(augmentation)の比較

1剤のSSRIで十分な治療の反応が得られる率は約40~60%であり4)、効果反応が不十分な場合は増強療法(augmentation;使用中の薬剤に別の薬剤を追加して効果を増強する薬物治療法)が行われることがあります。

増強療法では従来、第2世代抗精神病薬が使用され、アリピプラゾール(エビリファイ)リスペリドン(リスパダール)の2剤が有効であることが分かっています5)、6)、(図2)。

図2 SSRI抵抗性の強迫性障害に対する抗精神病薬による増強療法の比較

SSRI抵抗性の強迫性障害に対する抗精神病薬による増強療法の比較

第2世代抗精神病薬及びグルタミン酸抑制薬による増強療法の比較

近年は第2世代抗精神病薬に加え、グルタミン酸抑制薬が増強療法剤として有効であることが報告されています7)。

2019年にZhou, DD.らはSSRIで治療効果が十分に得られない強迫性障害に対する増強療法の効果の比較を、第2世代抗精神病薬とグルタミン酸受容体阻害薬を含めて解析し、報告しています8)。

グルタミン酸受容体阻害薬のメマンチン(メマリー)、ラモトリギン(ラミクタール)、トピラマート(トピナ)、第2世代抗精神病薬のアリピプラゾール(エビリファイ)、リスペリドン(リスパダール)の順に有効性が認められる結果でした(図3)。

忍容性は各薬剤の間で差は出ませんでした。

図3 SSRI抵抗性の強迫性障害に対する増強療法の比較

SSRI抵抗性の強迫性障害に対する増強療法の比較

最新の増強療法の比較

2023年7月Maitiらは新たに強迫症(強迫性障害)に対するSSRIの増強療法の薬剤の有効性の比較解析を行い、2019年のZhouらの解析同様メマンチン、ラモトリギンが特に優れている結果でした9)、(図4)。

図4 強迫性障害に対するSSRIへの増量療法の各薬剤の有効性の比較

強迫性障害に対するSSRIへの増量療法の各薬剤の有効性の比較

2019年のZhouらの解析と異なる点としては、オンダンセトロン、グラニセトロンといったセロトニン5-HT3阻害薬の有効性が示されたことです。

これらの結果から現在は徐々にグルタミン酸阻害薬を増強療法剤として選択する治療も増えてきています。

強迫症はセロトニン系、ドパミン系、グルタミン酸系システムが相互に関与していることがわかっており10)、SSRIとどのように増強療法を組み合わせるかバランスの良い選択が検討されます。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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