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ビペリデン(アキネトン)の
特徴・作用・副作用について

公開日 2023.8.14

作用・特徴

ビペリデン(先発医薬品名:アキネトン)は中枢神経のムスカリン性アセチルコリン受容体を阻害することにより、過剰となったコリン作動性神経の働きを抑制し、パーキンソン症候群・薬剤性パーキンソニズムを改善します(図1)。

図1 パーキンソン症候群に対する抗コリン薬の治療モデル

パーキンソン症候群に対する抗コリン薬の治療モデル

薬剤性アカシジア・ジストニアにも使用されます。

ドイツのKnoll社によって、先に開発されていた、トリヘキシフェニジル(先発医薬品名:アーテン・セドリーナ)のシクロヘキシル基を bicycloalkyl 基に置換させることによって、1955年に開発されました(図2)。

図2 トリヘキシフェニジルとビペリデンの化学構造式

トリヘキシフェニジルとビペリデンの化学構造式

日本では先発医薬品のアキネトンが、大日本住友製薬(現住友ファーマ社)から、1964年に販売されました。

作用の強さはトリヘキシフェニジルと比較して同程度であることがわかっています1)、(図3)。

図3 ビペリデンとトリヘキシフェニジルのムスカリン受容体阻害作用の強さ

ビペリデンとトリヘキシフェニジルのムスカリン受容体阻害作用の強さ

剤型

剤型は1mg錠、細粒1%、注射液5mgがあります(図4)。

図4 ビペリデン(先発医薬品:アキネトン)の剤型(錠剤・注射液)

ビペリデン(先発医薬品:アキネトン)の剤型(錠剤・注射液)

効能・効果

効能・効果は以下となっています。

効能・効果に関連する注意として、抗パーキンソン剤はフェノチアジン系薬剤、ブチロフェノン系薬剤、レセルピン誘導体等による口周部等の不随意運動(遅発性ジスキネジア)を通常軽減しません。

場合によっては、このような症状を増悪顕性化させることがあることが挙げられています。

用法・用量

通常成人1回1mg1日2回よりはじめ、その後漸増し、1日3~6mgを分けて内服します。

なお、年齢、症状により適宜します。

薬物動態

ビペリデン4mgを1回内服した際の血中濃度は約1.5時間で最高濃度に達し、約18.4時間後に半減します2)、(図5)。

図5 ビペリデン4mgを1回内服した際の血中濃度の推移

ビペリデン4mgを1回内服した際の血中濃度の推移

内服後3~5時間で脳内のアセチルコリン受容体を30%占有し、その後、占有は速やかに低下することが報告されています3)。

ビペリデンはヒドロキシル化、脱水反応、ヒドロキシル化の代謝を経て排泄されます4)、(図6)。

図6 ビペリデンの代謝

ビペリデンの代謝

副作用

重大な副作用として悪性症候群と依存性が挙げられています。

その他の副作用として以下が挙げられています。

ビペリデンは以下の患者さんでは禁忌となっています。

重要な基本的注意

重要な基本的注意として以下が挙げられています。

合併症・既往歴等ある場合

合併症・既往歴等ある場合に以下の注意が挙げられています。

口渇、便秘、尿閉などは一般的な末梢の抗コリン作用の副作用として知られています。

それらに加え、起立性低血圧、発汗低下が生じることがあり、夏場は想定外の熱中症が生じることがあり、外出時はより慎重な見守りが必要となります。

また、ビペリデンとトリヘキシフェニジルは気分高揚作用があることが報告されており5)、6)、双極性障害の患者さんのアカシジアに対し使用すると、さらに躁状態が悪化することがあるため注意が必要です。

もともと他国ではアカシジアに対し抗コリン薬は使用せず、ベンゾジアゼピン(ロラゼパムまたはクロナゼパム等)、βブロッカーを用いた治療が一般的に行われています。

日本でも現在は、徐々にロラゼパムやβブロッカーが中心となっています。

参考

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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