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肥満症治療薬①マジンドール(サノレックス)
の特徴・効果とリスクについて

公開日 2024.4.1

作用・特徴

マジンドール(サノレックス)はモノアミン取り込み阻害作用と摂食調節中枢に直接作用し、食欲を抑制します1~5)、(図1~3)。

図1 マジンドール(サノレックス)の作用機序①モノアミン取り込み阻害作用

マジンドール(サノレックス)の作用機序①モノアミン取り込み阻害作用

1967年に米国サンドファーマ社(現ノバルティスファーマ社)により開発され、日本では初の食欲抑制剤として、1992年に承認・発売されました。

モノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン)の中で、セロトニンは視床下部に直接作用し、満腹感をもたらし、摂食を抑制します(図2)。

図2 セロトニンの摂食への作用

セロトニンの摂食への作用

また、マジンドールが視床下部の食欲中枢を抑制し、満腹中枢を刺激することで、食欲を抑制します(図3)。

図3 マジンドールの作用機序②視床下部摂食中枢への作用

マジンドールの作用機序②視床下部摂食中枢への作用

これらの食欲抑制効果で3か月で約8kg、4カ月で約9kg体重が減少することが報告されています6)、7)、(図4)。

図4 マジンドールの体重減少効果

マジンドールの体重減少効果

同じ食欲抑制剤として欧米で使用されていた、依存性のあるアンフェタミンと薬の作用が一部同じであるため、依存に注意が必要とされているものの、依存性の原因となるフェニチルアミン骨格を有していないため、リスクは低いとされています(図5)。

図5 マジンドールとアンフェタミンの化学構造式

マジンドールとアンフェタミンの化学構造式

マジンドールはモノアミンに対して取り込み阻害作用を示しますが、アンフェタミンは取り込み阻害作用に加え、遊離の促進作用もあります8)、(図6)。

図6 マジンドールとアンフェタミンの作用の違い

マジンドールとアンフェタミンの作用の違い

アンフェタミンは作用の強い薬ですが、モノアミン取り込み阻害作用ではマジンドールがより強く作用します9)、10)、(図7)。

図7 マジンドールとアンフェタミンのモノアミン再取り込み阻害作用の強さの比較

(DA:ドパミン、NA:ノルアドレナリン、5-HT:セロトニン)

剤型

剤型は0.5mg錠があります(図8)。

図8 マジンドール(サノレックス)0.5mg錠の剤型

マジンドール(サノレックス)0.5mg錠の剤型

効能・効果

保険承認における効能・効果は以下となっています。

あらかじめ適用した食事療法及び運動療法の効果が不十分な高度肥満症(肥満度が+70%以上又はBMIが35以上)における食事療法及び運動療法の補助となります。

効能・効果に関連する使用上の注意として以下が挙げられています。

用法・用量

用法・用量は、通常、成人では、マジンドールとして0.5mg(1錠)を1日1回昼食前に内服します。

1日最高投与量はマジンドールとして1.5mg(3錠)までとし、2~3回に分けて食前に内服するが、できる限り最小有効量を用いることとなっています。

内服期間はできる限り短期間とし、3ヵ月を限度とします。

なお、1ヵ月以内に効果のみられない場合は内服を中止することとなっています。

用法・用量に関連する使用上の注意として以下が挙げられています。

薬物動態

マジンドール2mgを内服した際は、血中濃度は約5時間後に最高濃度に達し、約7時間半後に半減します11)、(図9)。

図9 マジンドール2mgを内服した際の血中濃度の推移

マジンドール2mgを内服した際の血中濃度の推移

マジンドールは肝臓で代謝され、主要代謝産物は、2-(2-アミノエチル)-3-(p-クロロフェニル)-3-ヒドロキシフタリミジン(Met)であることがわかっています12)、(図10)。

図10 マジンドールと主要代謝産物(Met)

マジンドールと主要代謝産物(Met)

副作用

以下の警告がもうけられています。

禁忌

以下に該当する場合は禁忌となっています。

慎重投与

以下の場合は慎重投与となっています。

基本的な注意

基本的な注意として以下が挙げられています。

併用について

併用禁忌としてMAO阻害剤が挙げられています。

併用注意として以下の薬剤が挙げられています。

副作用

総症例8060例中1721例(21.4%)に副作用発現を認め、主なものは以下でした(図11)。

図11 マジンドールの主な副作用

マジンドールの主な副作用

中枢神経に作用することから、マジンドールは向精神薬第3種に指定されています。

うつ病や不安症がある場合、症状が悪化することがあり使用はできません。

特に抗うつ薬をしている場合などは作用が一部重なるため、予期せぬ副作用が生じる可能性があり、使用を控えることが望ましいと言えます。

マジンドールのセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン取り込み阻害作用はSNDRIまたはトリプルモノアミン取り込み阻害作用とよばれています。

これに加え、現在、覚醒に作用するオレキシン2受容体に対し、部分作動作用を有することがあらたに報告されています13)。

SNDRI+オレキシン2受容体部分作動作用による強い中枢覚醒作用により、現在、海外ではADHD、ナルコレプシーに対する研究が進行中です。

逆に言うとそれほど強い作用の薬といえます。

文献

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執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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