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炭酸リチウム(リーマス)の
特徴・作用・副作用

公開日 2023.6.12

作用・特徴

炭酸リチウム(先発医薬品:リーマス)は興奮や気分の高ぶりを落ち着かせる作用のある薬です。

バルプロ酸ナトリウム(先発医薬品:デパケン、デパケンR、セレニカR)、カルバマゼピン(先発医薬品:テグレトール)などとともに、気分安定薬(mood stabilizer)と呼ばれています。

1817年にArfwedsonによって葉長石からリチウムが発見された後、当初、痛風の治療に用いられていました1)。

その後、1949年、cadeは躁病の背景に痛風の原因の尿酸が関与していると考え、躁病患者に炭酸リチウムを使用しました。

すると、抗躁効果が得られたことから、双極性障害に対する治療薬として使用されるようになります2)。

炭酸リチウムは主に以下の作用を介して、双極性障害の躁状態の改善、気分の安定効果をもたらすと考えられています。

① 細胞内シグナル伝達の調整3)、4)、(図1)

図1 炭酸リチウムの薬理作用①

炭酸リチウムの薬理作用①

② 神経伝達物質の調整5)、(図2)

図2 炭酸リチウムの薬理作用②

炭酸リチウムの薬理作用②

現在、炭酸リチウムは、双極性障害の治療において各ガイドラインで第1選択薬となっており、“ゴールドスタンダード”とされています。

炭酸リチウムには以下の作用が示されています。

急性躁状態(躁病エピソード)に対し、単剤及び第2世代抗精神病薬との併用での有効性が示されています6)~8)、(図3)。

図3 双極性障害急性躁状態(躁病エピソード)に対する薬剤の有効性の比較

双極性障害急性躁状態(躁病エピソード)に対する薬剤の有効性の比較

急性うつ状態(抑うつエピソード)では他の薬性との併用での有効性が示されており、各ガイドラインで推奨されています6)、9)、10)、(図4)。

図4 CANMAT and ISBDガイドライン2018(双極性障害抑うつエピソードへの推奨)

CANMAT and ISBDガイドライン2018(双極性障害抑うつエピソードへの推奨)

維持療法において単剤及び他の気分安定薬との併用で再発予防効果があることが示されています11)、(図5)。

図5 双極性障害維持療法における各薬剤の有効性の比較

双極性障害維持療法における各薬剤の有効性の比較

うつ病治療において、抗うつ薬に別の薬剤を組み合わせて抗うつ薬の治療効果を高める、増量療法における有効性が示されています12)、(図6)。

図6 抗うつ薬の増強療法に使用される薬剤の有効性の比較

抗うつ薬の増強療法に使用される薬剤の有効性の比較

うつ病、双極性障害(躁うつ病)患者の自殺リスクを低下させます13)、14)。

炭酸リチウムは認知機能に保護的に作用することが報告されています15)、16)。

剤型

剤型は100mg錠と200mg錠があります(図7)。

図7 炭酸リチウム(先発医薬品:リーマス)の剤型

炭酸リチウム(先発医薬品:リーマス)の剤型

効能・効果

保険承認における効能・効果は、躁病および躁うつ病の躁状態となっています。

用法・用量

用法・用量は、成人では通常1日400~600mgより開始し、1日2~3回にわけて内服します。

以後3日ないし1週間毎に、1日通常1200mgまでの治療量に漸増します。

改善がみられたならば症状を観察しながら、維持量1日通常200~800mgの1~3回分割経口投与に漸減します。

なお、年齢、症状により適宜増減します。

双極性障害躁病相、うつ病相、うつ病では以下の血中リチウム濃度で反応が得られやすいことが示されています17)。

薬物動態

1日1回200㎎を内服した際は血液中の濃度は約2.6時間で最高濃度に達し、約18時間後に半分に下がります(図8)。

図8 炭酸リチウム200mgを1日1回内服した際の血中濃度の推移

炭酸リチウム200mgを1日1回内服した際の血中濃度の推移

炭酸リチウムを1日3回に分けて内服した場合は、1回にまとめて内服した場合と比べて血中濃度が安定することが示されています(図9)。

図9 炭酸リチウム分割内服と単回内服での血中濃度の推移の違い

炭酸リチウム分割内服と単回内服での血中濃度の推移の違い

炭酸リチウムを毎日内服した際は5日目から一定の濃度に維持されます(図10)。

図10 炭酸リチウム400mgを12時間おきに連続内服した際の血中濃度の推移

炭酸リチウム分割内服と単回内服での血中濃度の推移の違い

副作用

炭酸リチウムは以下の副作用が多いことが報告されています18)。

炭酸リチウムの副作用で太るという心配の声もありますが、近年の解析では体重増加への影響は、プラセボと差がないことが示されています19)。

リチウムの血中濃度の上昇でリチウム中毒が生じることがあります20)。

リチウム中毒では、以下の主に以下の症状が生じます。

リチウムによる夜間せん妄が生じることもあります。

また、炭酸リチウムの治療で白血球が増加することがあります21)。

血中濃度は以下の薬剤との併用で上昇しやすいため、飲み合わせに注意が必要です。

炭酸リチウムは以下の患者さんでは禁忌となっています。

妊娠初期(0~12週)における炭酸リチウムの内服は奇形と心臓奇形をきたすリスクが指摘されています22)。

炭酸リチウムは離脱症状が生じることが示唆されており、中止する際は漸減して中止します。

離脱症状は以下の症状は指摘されています23)。

症状は軽度とされています。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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