公開日 2025.9.18
効果・特徴
メトクロプラミド(プリンペラン)は、脳と消化管の両方に作用し、吐き気、嘔吐、腹部膨満等を改善する効果があります。
脳の吐き気に関わっている部位(CTZ: chemoreceptor trigger zone)のドパミンD2受容体を遮断することで吐き気を改善します。
加えて、消化管のセロトニン5-HT4受容体を作動させることで消化管の動きを改善することも、吐き気の改善に寄与しているとされています1)。
メトクロプラミドは、不整脈の治療薬であるプロカインアミド(アリサミン)を改良するプログラム中に特定され、開発されました1)。
そのため、プロカインアミドに似た構造式を有しています(図1)。
図1 メトクロプラミドとプロカインアミドの構造式
ドンペリドン(ナウゼリン)と同じく、精神科・心療内科では、SSRIやSNRIなどの、内内服開始時に嘔気が生じる薬剤に、一時頓用や併用で使用されることがあります。
また、片頭痛発作中の嘔気にも有効ですが、片頭痛そのものへの治療効果があることもわかっています。
そのため、鎮痛薬との併用は効果的なアプローチとされています2)。
効能・効果
効能・効果は以下となっています。
次の場合における消化器機能異常(悪心・嘔吐・食欲不振・腹部膨満感)
胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胆嚢・胆道疾患、腎炎、尿毒症、乳幼児嘔吐、薬剤(制癌剤・抗生物質・抗結核剤・麻酔剤)投与時、胃内・気管内挿管時、放射線照射時、開腹術後
X線検査時のバリウムの通過促進
用法・用量
<プリンペラン錠5、プリンペラン細粒2%>
通常成人1日7.67~23.04mgを2~3回に分割し、食前に内服する。なお、年齢、症状により適宜増減するとなっています。
<プリンペランシロップ0.1%>
メトクロプラミドとして、通常成人1日7.67~23.04mgを2~3回に分割し、食前に内服する。 小児は、1日0.38~0.53mg/kgを2~3回に分割し、食前に内服する。なお、年齢、症状により適宜増減するとなっています。
剤型
剤型は5mg錠、細粒2%、シロップ0.1%、注射液10mgがあります。
図2 プリンペランの剤型
薬物動態
メトクロプラミド(プリンペラン)10mgを内服した際の血中濃度は、約1.2時間後に最高濃度に達し、約3時間後に半減します。
図3 メトクロプラミド(プリンペラン)10mgを内服した際の血中濃度の推移
血中濃度から、効果時間は約3時間といえます。
内服を追加する際は、3~4時間あければ問題ないと言えます。
禁忌
以下の患者さんは禁忌となっています。
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 褐色細胞腫又はパラガングリオーマの疑いのある患者[急激な昇圧発作を起こすおそれがある。]
- 消化管に出血、穿孔又は器質的閉塞のある患者[本剤には消化管運動の亢進作用があるため、症状を悪化させるおそれがある。]
飲み合わせの注意
フェノチアジン系薬剤
プロクロルペラジン・クロルプロマジン・チエチルペラジン等
ブチロフェノン系薬剤
ラウオルフィアアルカロイド薬剤
レセルピン等
ベンザミド系薬剤
スルピリド・チアプリド等(内分泌機能異常、錐体外路症状が発現しやすくなる。)
ジギタリス剤
ジゴキシン ジギトキシン等 (ジギタリス剤飽和時の指標となる悪心・嘔吐、食欲不振症状を不顕性化するおそれがある。)
カルバマゼピン
(カルバマゼピンの中毒症状(眠気、悪心・嘔吐、眩暈等)があらわれることがある。)
抗コリン剤
アトロピン硫酸塩水和物・ブチルスコポラミン臭化物等 (相互に消化管における作用を減弱するおそれがある。)
副作用
副作用には以下のリスクがあげられています3)。
- 急性ジストニア
- 高プロラクチン血症
- 薬剤性パーキンソン症候群
- 遅発性ジスキネジア
- 悪性症候群
文献
- 1) Sanger GJ, Andrews PLR.: A History of Drug Discovery for Treatment of Nausea and Vomiting and the Implications for Future Research. Front Pharmacol, 9:913, 2018.
- 2) 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 . 頭痛の診療ガイドライン2021.
- 3) Hasan EI, et al.: Assessment of a controlled release hydrophilic matrix formulation for metoclopramide HCl. Eur J Pharm Biopharm, 55: 339-44, 2003.
- 4) Isola S, et al.: Metoclopramide. StatPearls [Internet], 2023.
吐き気止め(制吐剤)の関連コラム一覧
- 頭が働かない
- 寝つきが悪い
- やる気が起きない
- 不安で落ち着かない
- 朝寝坊が多い
- 人の視線が気になる
- 職場に行くと体調が悪くなる
- 電車やバスに乗ると息苦しくなる
- うつ病
- 強迫性障害
- 頭痛
- 睡眠障害
- 社会不安障害
- PMDD(月経前不快気分障害)
- パニック障害
- 適応障害
- 過敏性腸症候群
- 心身症
- 心的外傷後ストレス障害
- 身体表現性障害
- 発達障害
- ADHD(注意欠如・多動症)
- 気象病・天気痛
- テクノストレス
- バーンアウト症候群
- ペットロス(症候群)
- 更年期障害
- 自律神経失調症