高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

高津心音メンタルクリニック 心療内科・精神科 川崎市 溝の口

冬季うつ病
(季節性感情障害)について

公開日 2021.10.25

症状

冬季うつ病(季節性感情障害)は1984年Rosenthal医師らにより報告され 1)、秋から冬にかけてうつ症状を示し、春から夏にかけてうつ症状が改善する状態を繰り返す疾患です。

うつ病の一つのタイプである場合と双極性障害の一つのタイプである場合があるとされています 2)、3)。

うつ病の中核症状である気分の落ち込み、興味や喜びの喪失に加え、食欲増加、炭水化物をたくさん食べたくなる、過眠傾向といったうつ病で典型的な食欲低下、不眠とは異なる症状が生じることがあります(図1)、4)。

図1 冬季うつ病に多い症状

有病率

日本では約1% 5)、6)、世界全体でみると0~9.7%程度まで幅があることが報告されています 7)。性差では男性と比較し、女性の有病率が高いとされています 8)。

病因・病態

緯度や日照時間が有病率に関係することが示唆されていますが(図2)、6)、関連しないとするデータもあり、完全に一致した見解には至っていません 7)。

図2 冬季うつ病 世界地図で見る緯度と有病率

睡眠相後退症候群(DSPS;delayed sleep phase syndrome) が冬季うつ病の発症に関連するという報告があります 9)。

体内時計の遅れ(位相シフトの遅延)とメラトニンの分泌のかかわりが指摘されています 10)。睡眠中のレム睡眠が増加していることも報告されています 11)。

また、セロトニン系の伝達異常が指摘されています。

近年、脳画像研究で脳の前頭前野におけるセロトニントランスポーターが夏から冬にかけてうまく季節変化に対応できていない可能性が指摘されています 12)、13)。

治療

治療は光線療法と抗うつ薬(SSRI;選択的セロトニン再取り込み阻害剤)が有効とされています 14)、15)。

光線療法では発光器具を利用し、10,000ルクス程度の白色光を1日30分程度照射します(図3)。

耳から光をあてる光療法の有効性も報告されており 16)、簡易的な治療器具もあります(図3)。

図3 光学療法機器

光線療法は位相シフトの正常化(体内リズムの安定化)だけでなく、上述の季節変化に対応できないセロトニントランスポーターの正常化をもたらすことも治療効果の要因とされています 17)。

抗うつ薬の治療は、海外では日本未承認のフルオキセチンの使用が多いですが、他のSSRIではセルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)の有効性も報告されており 18)、19)、日本ではこれらが選択されることが多いです。

参考文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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