高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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ビタミンDと精神疾患について

公開日 2022.6.27

はじめに

近年、栄養学と精神医学の研究において、ビタミンD欠乏と精神疾患の関連性が多く報告されるようになっています 1)。

また、精神疾患のみならずがんや感染症などの身体疾患にも関わることがあることがわかってきています 2)。

日本人の多くが現在、ビタミンDが不足していることが報告されています 3)。

ビタミンD合成には日光に当たる必要がありますが、美容のため日光を避ける傾向が強くなったことや、魚を食べる機会が減ったことが影響していると報告されています 4)、5)。

また、新型コロナウイルス感染症の流行で在宅勤務が増えたことで、より日光へ当たる機会が減ったこともビタミンDの不足につながっていることが指摘されています 6)。

ビタミンD欠乏と精神疾患

ビタミンDの不足とうつ病が関連していることが報告されています 7)、(図1)。

また、産後うつ病との関連も報告されています 8)。

図1 ビタミンD欠乏とうつ病の関連

ビタミンD欠乏とうつ病の関連

ビタミンDの補充はうつ病の治療に効果があることが解析されています 9)、10)、(図2)。

図2 ビタミンD補充によるうつ病に対する治療効果

ビタミンD補充によるうつ病に対する治療効果

ビタミンDの不足と統合失調症の関連も報告されています 11)。

ビタミンDの補充が統合失調症の症状の改善に有効であることが報告されています 12)、(図3)。

図3 ビタミンD補充による統合失調症に対する治療効果

ビタミンD補充による統合失調症に対する治療効果

双極性障害においても関連性が指摘されており、ビタミンDの補充は躁症状とうつ症状の改善に有効であることが報告されています 13)、14)。

不安障害においても関連性が指摘されており、ビタミンDの補充は不安の軽減に有効であることが報告されています15)、16)。

ビタミンDの不足とADHDとASD(自閉スペクトラム症)の関連も報告されています 17)、18)、(図4)。

ビタミンDの補充により、ADHDの感情や行動上の問題及び、ASDの関連症状の改善も報告されています19)、20)。

図4 ビタミンD欠乏とADHDの関連

ビタミンD欠乏とADHDの関連

(ADHD群は健常者群と比較しビタミンD濃度が平均6.93 ng/mL少ない結果でした)

ビタミンDの不足と認知機能低下、認知症との関連についても報告されています 21)、22)、(図5)。

ビタミンDの血中濃度を十分保つことは、認知症発症のリスクを低下させることが報告されています 23)。

図5 ビタミンD欠乏と認知症のリスク

ビタミンD欠乏と認知症のリスク

ビタミンD欠乏と性機能障害

うつ病や更年期症障害では性機能障害が生じることがありますが、男性のED(勃起障害)や女性の性機能障害はビタミンDの不足と関連していることが報告されています 24)、25)、26)、(図6)。

ビタミンDの補充はEDや女性の性機能障害の改善に有効であることがわかっています 27)、28)。

図6 ビタミンD欠乏とEDの関連

ビタミンD欠乏とEDの関連

ビタミンD欠乏と頭髪脱毛症

精神疾患に伴い自宅で療養が長く続いたり、長期入院になると頭髪の脱毛が生じることがあります。

ビタミンDの不足は頭髪の脱毛と関連していることがわかっています 29)。

一般的な男性のAGA(androgenic alopecia : 男性型脱毛症)や円形脱毛症もビタミンDの不足と関連していることが報告されています30)、31)。

ビタミンDの補充は脱毛症の治療に有効である可能性が示唆されています 32)。

おわりに

ビタミンDは心身の健康と密接に関わっており、魚の摂取や日光に適度に当たることが推奨されます。

日焼け止めはビタミンD合成を低下させることはないことがわかっており、日焼けが気になる場合は、日焼け止めの使用をやめる必要はありません。

仕事が夜勤専従であったり、日光過敏がある場合などは、サプリメントを活用してもよいかもしれません。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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