高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

高津心音メンタルクリニック 心療内科・精神科 川崎市 溝の口

神経発達症(発達障害)に
使用される漢方薬

公開日 2021.12.6

抑肝散

抑肝散はもともと小児の夜泣き、ひきつけなどに使用され、その後、成人のイライラ、不眠などにも使用されるようになりました。

自閉スペクトラム症(ASD)の癇癪(かんしゃく)、自傷行為を含む過敏性にも有効であることが報告されています 1)、2)、(図1)。

図1 抑肝散のASDに対する効果

これらのメカニズムは、抑肝散のセロトニン神経系とグルタミン酸神経系を介した興奮の抑制によるものと考えられています 3)、(図2)。

図2 抑肝散の薬理作用

ASD傾向でこだわりがあり、マイルールから物事がずれると「癇(かん)にさわり」イライラし、やや不適応気味になる例などでは抑肝散で落ち着きがでて、過ごしやすくなることがあります。

甘麦大棗湯

甘麦大棗湯は小児の夜泣きや成人の不安発作などに使用される漢方薬ですが、ASDの一次障害(社会的コミュニケーションの障害、反復的な行動など)、二次障害(不安、興奮など)に有効であることが報告されています 4)。

甘麦大棗湯は神経細胞膜のイオン電流の抑制等を介し、鎮静作用をもたらす機序が報告されており 5)、6)、(図3)、これらのメカニズムが関与している可能性が考えられます。

図3 甘麦大棗湯の薬理作用

食後に生あくびが出やすく注意散漫な印象な一方、不安や過敏さを有する場合などに使用すると効果的なことがあります。

加味逍遥散

加味逍遥散は更年期障害やPMS(月経前症候群)などに多く使用される漢方薬ですが、動物モデルでASD様の行動の改善がみられる報告がなされています 7)、8)。

これらのメカニズムには、GABA-A受容体とドパミンD1受容体を介した神経伝達による作用が関与していることが示唆されています 8)、(図4)。

図4 加味逍遥散の薬理作用

女性のASD傾向の方でPMSや自律神経兆候が強い場合、加味逍遥散の使用で改善が得られる場合があります。

ASDにPMSが重なると感情調整がさらに難しくなったり、生理前により感覚過敏がますことがありますが、そのような場合にも効果があることがあります。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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