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パリペリドン(インヴェガ)
について

公開日 2023.2.6

作用・特徴

パリペリドン(インヴェガ)はリスペリドン(リスパダール)の主代謝物で(図1)、リスペリドンと同じくドパミンD2受容体拮抗作用とセロトニン5-HT2A受容体拮抗作用を有し、統合失調症の陽性症状、陰性症状に効果を示します1)。

図1 リスペリドンとパリペリドンの化学構造式

リスペリドンとパリペリドンの化学構造式

リスペリドン(リスパダール)と比較し、ドパミンD2受容体拮抗作用はほぼ同等で、セロトニン5-HT2A受容体拮抗作用はやや弱いことがわかっています2)。

抗精神病薬間の比較の研究では、両者の統合失調症の陽性症状、陰性症状に対する効果は同程度である結果が報告されています1)。

リスペリドン(リスパダール)と比較し、鎮静作用が弱く、社会的機能が良好であることが、同じく抗精神病薬間の比較の研究で報告されています1)。

この差は、アドレナリンα2受容体を遮断する作用が、リスペリドン(リスパダール)より強いことに起因していると考えられています3)、(図2)。

図2 リスペリドン VS パリペリドン アドレナリンα1a・α2a受容体遮断作用

リスペリドンVSパリペリドン アドレナリンα1a・α2a受容体遮断作用

アドレナリンα2受容体を遮断することにより、脳の前頭前野において、ドパミン放出とNMDA受容体を介した伝達が促進し、認知機能が改善することが関与すると考えられています4)~7)。

効能・効果

現在、統合失調症のみで承認を得ています。

米国と英国では「統合失調症」及び「統合失調感情障害」で承認を得ています。

用法・用量

通常、成人では6mgを1日1回朝食後に内服します。

なお、年齢、症状により1日12mg を超えない範囲で適宜増減しますが、増量5日間以上の間隔をあけて1日量として3mgずつ行うこととなっています。

適正用量とされる、脳内ドパミン受容体の60~80%以内を占拠率する用量は、6~9mgとされています(図3)。

図3 パリペリドン(インヴェガ)の用量とドパミンD2受容体占拠率の関係

パリペリドン(インヴェガ)の用量とドパミンD2受容体占拠率の関係

パリペリドンは消化管で吸収されます。

消化管は夜寝ているとき、副交感神経優位な状態で蠕動運動が亢進します。

そのため、夜内服すると消化管からの排泄が早まるので、より血中濃度を安定させるため、朝の内服となっています。

用法・用量に関連する注意として以下があげられています。

薬物動態

パリペリドンは肝臓での代謝率は低く、他の薬剤との相互作用のリスクは低いです。

浸透圧を利用した放出制御型徐放錠(図4)で24時間血中濃度が安定します。

図4 パリペリドン(インヴェガ)の錠剤断面図

パリペリドン(インヴェガ)の錠剤断面図

1日1回内服した際は血中濃度は緩やかに上昇し、約24時間で最高濃度に達し、20~23時間で半減します(図5)。

図5 パリペリドン(インヴェガ)1回内服時の血中濃度の推移

パリペリドン(インヴェガ)1回内服時の血中濃度の推移

毎日内服すると、5日までにはおおむね一定の濃度に維持されます(図6)。

図6 パリペリドン(インヴェガ)を毎日内服した際の血中濃度の推移

パリペリドン(インヴェガ)を毎日内服した際の血中濃度の推移

空腹時に内服すると血中濃度が下がるため、できるだけ食後の内服に統一することが推奨されます。

副作用

承認時までの国内臨床試験における安全性評価対象例312例中269例(86.2%)に副作用が認められ、主なものは、以下でした(図7)。

図7 パリペリドン(インヴェガ)の主な副作用

パリペリドン(インヴェガ)の主な副作用

リスペリドン(リスパダール)とパリペリドン(インヴェガ)は他の抗精神病薬と比較して、血中プロラクチン濃度の上昇のリスクが高いことが報告されています1)、8)。

体重増加のリスクは他の抗精神病薬と比較して、中程度と報告されています9)、(図8)。

図8 第2世代抗精神病薬における体重増加のリスクの比較

第2世代抗精神病薬における体重増加のリスクの比較

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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