高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

高津心音メンタルクリニック 心療内科・精神科 川崎市 溝の口

原因不明の耳鳴りに対する薬物治療
有効性の比較

公開日 2022.12.19

はじめに

耳鳴りの有病率は約11%~30%と高く、女性と比較し男性の有病率が高く、年齢が高くなるにつれ有病率も高くなることが報告されています1)。

メニエール病や聴神経腫瘍に伴う耳鳴りといった疾患に伴い生じるものと、発症要因が特定できない耳鳴りがあります2)。

中でもうつ病との関係で、うつ病に併存して耳鳴りが生じることがあり、また耳鳴りが抑うつ状態を悪化させることがあります3)、4)。

そのため、うつ病や不眠に対するアプローチが必要になり、耳鼻咽喉科と連携し精神科・心療内科が治療にあたることがあります。

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症流行後は、感染流行に伴う不安とストレスが耳鳴りに影響を与えたことが報告されています5)。

また、新型コロナウイルス感染により難聴、耳鳴り、めまいが生じるリスクが指摘されています6)。

耳鳴りの原因

近年、耳鳴りには炎症が関与し、炎症性サイトカインのTNF-α、IL-1βの増加が耳鳴りの原因となっている可能性が指摘されています7)、(図1)。

図1 耳鳴りと炎症の関連

現在までのエビデンス

耳鳴りに対する薬物治療では、主に以下の薬剤の有効性が報告されていました8)。

最新のエビデンス

Chen JJらは、2021年に原因が特定できない耳鳴りに対する薬物治療の有効性の比較の解析を報告しています9)。

耳鳴りの重症度の改善では以下の順で改善率が高い結果でした(図2)。

図2 原因不明の耳鳴りに対する薬物治療の有効性の比較 重要度の改善

治療奏功率では以下の順に優れている結果でした(図3)。

図3 原因不明の耳鳴りに対する薬物治療の有効性の比較 奏功率

ガバペンチン(ガバペン)はNMDAグルタミン酸神経系を抑制し、GABA神経系を増強する作用があります。

またアカンプロサート(レグテクト)は、NMDAグルタミン酸受容体伝達を調整し、GABA受容体を間接的に調節すると考えられています10)。

これらは、炎症と耳鳴りのメカニズムで指摘されている、NMDA受容体活性の増強とGABA受容体活性の減少に対しての治療効果を有することが想定されます。

おわりに

うつ病やストレスは耳鳴りに関連し、症状は持続することがあります。

ストレスの軽減といった環境要因への配慮とともに、うつ病等の背景疾患に応じた薬物選択も治療の選択肢になるといえます。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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