公開日 2023.5.1
内閣府による2022年度調査では、ひきこもり当事者は推計146万人とされています1)。
ひきこもりの定義は“様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念”とされています2)。
統合失調症の陰性症状などによるものでない非精神病性によるものとされる一方、精神病院を受診した、ひきこもり当事者には何らかの診断が該当したとする報告もあります3)、(図1)。
診断では主に不安障害、発達障害、統合失調症が同程度で多い割合でした。
そのため、精神疾患によるもの、または長期化するひきこもりの影響で何らかのメンタルヘルス上の問題が生じていないか慎重な判断を要します。
性別では15~39歳では男性が53.5%、女性が45.1%、40~69歳では男性が59.4%、女性が40.6%でした。
ひきこもりになった理由は15~39歳では、退職したこと、人間関係がうまくいかなかったこと、新型コロナウイルス感染症の流行したことが上位の理由でした(図2)。
40~69歳では退職したこと、新型コロナウイルス感染症の流行したこと、病気が上位の理由でした(図3)。
初めてひきこもりになった年齢は、2019年度調査では、全年齢層でみられるものの、若者だけでなく、60歳以上の割合も高い結果でした(図4)。
これらのデータから、従来の学童期の不登校を背景としたひきこもりは引き続き注視が必要ながら、終身雇用制度の崩壊、早期退職等を背景とした中高年のひきこもりも新たな課題となっていることがわかります。
特に勤勉で実直に会社に勤務していた勤労者ほど、退職後に趣味やコミュニティとのつながりがなく、孤立しやすい傾向にあります。
個人の問題だけでなく、余暇の時間が十分にとれ、趣味や家族・友人らとの交流の時間が十分保たれるような、労働環境の構造的な変化が必要と考えられます。
また、15~39歳のひきこもり当時者が有する孤独感は常にあると時々あるを合わせると82%でした(図5)。
将来への希望の割合は希望がないとどちらかといえば希望がないを合わせると71%でした(図6)。
孤独感と希望のなさ(絶望感)はうつ病のリスク因子であるとともに、自殺リスク因子であることがわかっています5)~9)。
これらの心理的背景に注意しつつ、援助を要します。
家庭内では家族関係を含めてひきこもりが硬直化していることもあり、家庭内のみで解決の糸口をみつけようとせず、相談窓口を利用し、支援機関につながることが有効です。
現在相談先として、全国にひきこもり地域支援センターがあります。
連絡先リストは以下になります。
また、各自治体に相談窓口があり、相談することも可能です。
ひきこもり地域支援センターでは、窓口誘導のための取り組み、相談対応、本人への段階的な支援が行われます(図7)。
その過程において必要に応じ、医療機関、地域若者サポートステーション等へとつなぎが行われ、支援が継続されます(図8)。
ゴールデンウイーク明けは学生や新社会人が、学生生活、新社会人生活になじめず、つまづきが生じ、そのままひきこもりになる事例が多く見られます。
また、日本では3~6月が自殺が多い月であり、かつゴールデンウイーク明けは若年者の自殺率が増加することがわかっています10)、11)。
悩みを抱え込まずに早めに“SOS”を発信するようにしてください。
早期援助希求行動がとれるほど、早い段階での解決につながります。