高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

高津心音メンタルクリニック 心療内科・精神科 川崎市 溝の口

冷えと諸症状に対する
漢方治療

公開日 2022.12.7

人参養栄湯
(ニンジンヨウエイトウ)

人参養栄湯は冷えと疲労、倦怠感が強い場合に使用されます。

近年は高齢者のフレイルへの効果で注目されていますが1)、若年者で冷えが強く、疲労を伴う場合にも効果があります。

葛根湯と補中益気湯の併用の新型コロナウイルス感染予防効果が報告されていますが2)、3)、人参養栄湯は研究の対象人数が少数ながら、感染後の治療効果が示唆されています4)。

また、抗うつ作用や認知症における認知機能改善効果も報告されています5)、6)。

人参養栄湯は多様な機序を介し、種々の効果をもたらすこと示されています(図1)。

図1 人参養栄湯の作用

六君子湯(リックンシトウ)

六君子湯は食欲低下に効果がありますが、冷えと胃腸症状を伴う場合にも使用されます。女性の冷えと胃腸症状への効果が報告されています7)。

六君子湯はグレリンのシグナル伝達を促進し、食欲不振を改善します(図2)。

図2 六君子湯の薬理作用

当帰四逆加呉茱萸生姜湯
(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は手先、足先まで冷える冷えの強い場合に有効です。

慢性片頭痛といえば呉茱萸湯ですが、手足の強い冷えに片頭痛を伴う場合には当帰四逆加呉茱萸生姜湯が効果的なことがあります8)。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は末梢の血流を改善し、末端冷え性を改善することが示唆されています9)。

メカニズムとして血管平滑筋細胞及び内皮細胞における低温反応の生理活性を阻害し、末梢静脈の収縮を阻害することが示唆されています10)、11)、(図3)。

図3 当帰四逆加呉茱萸生姜湯の作用

五積散(ゴシャクサン)

五積散は冷えと神経痛・関節痛を伴う場合に使用されます。

冷えのタイプとして、下肢の冷え・上半身のほてり(上熱下寒型)に腰痛を伴う場合などに有効です12)。

細脈を認める若年女性では冷えの改善率が高いことが報告されています13)。

温経湯(ウンケイトウ)

唇の乾燥があり、手足がほてる冷えのタイプに使用されます。

「経路」を「温める」という意から付いた処方名ですが、上半身の過剰な血流を抑制し、下肢の血流を増加させ全身の血流を安定させることが報告されています14)。

温経湯は更年期のうつ症状に対し、ホルモン補充療法で改善が得られない場合に補助療法として有効であることが報告されています15)。

また、ゴナドトロピン(卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン)の分泌を促し、月経周期を安定させることが示されています16)、(図4)。

図4 温経湯の薬理作用

上記他に四物湯や三大婦人漢方薬の当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸なども冷え性に効果があり使用されています。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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