高津心音メンタルクリニック|心療内科・精神科 川崎市 溝の口

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アマンタジン(シンメトレル)の
特徴・作用・副作用について

公開日 2023.9.4

作用・特徴

アマンタジンはパーキンソン病、薬剤性パーキンソニズムを改善する作用を有します。

ただし、早期パーキンソン病に対しては、有効性はあるものの、改善率は高くないこと、進行期の有効性は不明であり1)、現在、一般的な治療薬として多くは使用されていません。

薬剤性錐体外路症状に対して、米国で保険承認を得ており、薬剤性パーキンソニズムに対して、中枢性抗コリン薬以外の治療薬の一つとして使用されることがありますが、精神症状が増悪することがあり、通常は第1選択としては使用されません。

A型インフルエンザウイルス感染症に対する治療効果を従来有していましたが、現在は耐性が多く出現していることから、各国で使用を控えることが推奨されており、現在は使用されることはほとんどありません2)、3)。

近年、外傷性脳損傷による認知機能を改善する作用が示唆されています4)。

日本では1975年からノバルティスファーマ社より発売され、2016年よりサンファーマに販売移管しています。

アマンタジンは主としてNMDAグルタミン酸受容体阻害作用とドパミン神経伝達を強化することにより、パーキンソン症候群を改善すると考えられています5)、6)、(図1)。

図1 アマンタジンの作用機序

アマンタジンの作用機序

開発経緯

アマンタジンはアダマンタン分子から合成されました(図2)。

図2 アマンタジンの合成

アマンタジンの合成

当初、A型インフルエンザウイルス感染症治療薬として開発されました。

一人のパーキンソン病患者さんがA型インフルエンザに感染し、アマンタジンで治療したところ、パーキンソン症状が偶然に改善したことから、パーキンソン症候群への治療効果が見出されました7)。

のちにアダマンタンから同じNMDA受容体阻害作用を有するメマンチン(先発医薬品名:メマリー)が開発されます。

そのため、アマンタジンはメマンチンに似た化学構造式を有します(図3)。

図3 アマンタジンとメマンチンの化学構造式

アマンタジンとメマンチンの化学構造式

アマンタジンのNMDA受容体阻害作用は比較的弱く、メマンチンの阻害作用は強いことが報告されています8)、(図4)。

図4 アマンタジンとメマンチンのNMDA受容体阻害作用の強さ

アマンタジンとメマンチンのNMDA受容体阻害作用の強さ

剤型

剤型は先発医薬品のシンメトレル、後発医薬品ともに50mg錠、100mg錠、細粒10%があります(図5)。

図5 アマンタジン(先発医薬品:シンメトレル)の剤型(錠剤)

アマンタジン(先発医薬品:シンメトレル)の剤型(錠剤)

効能・効果

保険承認における効能・効果は以下となっています。

用法・用量

パーキンソン症候群の場合

通常、成人では初期量1日100mgを1~2回に分けて内服し、1週間後に維持量として1日200mgを2回に分けて内服します。

なお、症状、年齢に応じて適宜増減することができますが、1日300mgを3回に分けて内服するまでとなっています。

脳梗塞後遺症の場合

通常、成人では1日100~150mgを2~3回に分けて内服します。

なお、症状、年齢に応じて適宜増減します。

A型インフルエンザウイルス感染症の場合

通常、成人では1日100mgを1~2回に分けて内服します。

なお、症状、年齢に応じて適宜増減します。

ただし、高齢者及び腎障害のある患者では投与量の上限を1日100mgとすることとなっています。

薬物動態

アマンタジン50mgを1回内服した際は、約3.3時間後に血中濃度は最高濃度に達し、約12.3時間に半減します(図6)。

図6 アマンタジン50mgと100mgを1回内服した際の血中濃度の推移

アマンタジン50mgと100mgを1回内服した際の血中濃度の推移

副作用

重大な副作用

重大な副作用として以下が挙げられています。

1)悪性症候群(Syndrome malin)(0.1%未満)

急激な減量又は中止により、高熱、意識障害、高度の筋硬直、不随意運動、ショック症状等があらわれることがあるので、このような場合には再投与後、漸減し、体冷却、水分補給等の適切な処置を行うこと。本症発症時には、白血球の増加や血清CK(CPK)の上昇がみられることが多く、またミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられることがある。

なお、投与継続中にも同様の症状があらわれることがある。

2)中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群 (Stevens-Johnson症候群)(頻度不明)

中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

3)視力低下を伴うびまん性表在性角膜炎、角膜浮腫様症状(頻度不明)

このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

4)心不全(頻度不明)

このような症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

5)肝機能障害(頻度不明)

AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP上昇等の肝機能障害 があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。

6)腎障害(頻度不明)

腎障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

なお、腎機能が低下している患者では、本剤の排泄遅延が起こりやすい。

7)意識障害(昏睡を含む)(頻度不明)、精神症状(幻覚、妄想、せん妄: 5%未満、錯乱:0.1%未満等)、痙攣(0.1%未満)、ミオクロヌス(頻度不明)

意識障害(昏睡を含む)、精神症状(幻覚、妄想、せん妄、錯乱等)、痙攣、ミオクロヌスがみられることがある。

このような場合には減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。特に腎機能が低下している患者においてあらわれやすいので注意すること。

8)横紋筋融解症(頻度不明)

横紋筋融解症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇等があらわれた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うこと。

また、横紋筋融解症による急性腎不全の発症に注意すること。

主な副作用

承認時まで及び承認時以降を合わせた調査症例数2,278例中534例(23.4%)に副作用発現を認め、主なものは以下でした(図7)。

図7 アマンタジンの主な副作用

アマンタジンの主な副作用

重大な副作用として特に精神症状の増悪、角膜浮腫、アマンタジン中毒があり、注意を要します9)、10)、11)。

アマンタジン中毒では血中濃度が3000 ng/mlを超えると生じやすいことが報告されており、また、血中濃度が3000 ng/mlを超えると、ミオクローヌスが生じやすくなることも報告されています。11)、12)。

文献

執筆者:
高津心音メンタルクリニック
院長 宮本浩司

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