公開日 2023.12.25
特徴・作用
ブレクスピプラゾール(レキサルティ)はドパミンの伝達機能を適度に調節するとともに、セロトニンにも作用することで統合失調症の精神症状を改善します1)~4)、(図1、2)。
図1 レキサルティのドパミンD2受容体部分活性化作用
図2 統合失調症に対するレキサルティの効果
統合失調症の精神症状に対しては内服開始後3週目より効果が認められる結果が報告されています4)。
ブレクスピプラゾールはアリピプラゾールが開発された後に合成され、同じフェニルピペラジン系向精神薬に分類されます(図3)。
図3 アリピプラゾールとブレクスピプラゾールの化学構造式
アリピプラゾール(エビリファイ)と比較し、ドパミンを刺激する作用はよりマイルドにし、セロトニンに対してはより強く作用します(図4、5)。
この作用から「セロトニン‐ドパミン アクティビティ モジュレーター:SDAM」と呼ばれています。
図4 レキサルティとエビリファイのドパミンD2受容体に対する固有活性の比較
図5 エビリファイvsレキサルティ ドパミン受容体とセロトニン受容体への親和性の比較
統合失調症の精神症状に有効であることに加え、抗うつ薬に追加することで抗うつ作用の増強効果が得られることがわかっています5)、6)、(図6、7)。
図6 レキサルティの抗うつ薬に対する増強療法の効果
効果は2週目にはみられる結果が報告されています5)。
図7 抗うつ薬の増強療法に使用される薬剤の有効性(Nuñez et al.,2022)
また、アルツハイマー型認知症のアジテーション症状に有効であることが示されています7)、(図8)。
図8 レキサルティによるアルツハイマー型認知症のアジテーション症状の改善効果
アリピプラゾール(エビリファイ)と同様に代謝系への影響が少ないことに加え、ドパミンD3への刺激がマイルドなため、エビリファイの副作用でまれにみられる衝動性亢進、病的ギャンブルなどが生じる頻度は少ないとされています8)、9)。
剤型
剤型には1mg錠、2mg錠、0.5㎎OD(口腔内崩壊)錠、1mgOD錠、2mgOD錠があります。(図9)
図9 レキサルティの剤型
効能・効果
日本では以下の効能・効果を得ています。
- 統合失調症
- うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
米国では「統合失調症」、「うつ病への追加療法」、「アルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション症状)」に適応を取得しています。
用法・用量
統合失調症では、通常、成人では1日1回1mgから内服を開始した後、4日以上の間隔をあけて増量し、1日1回2mgを内服するとなっています。
うつ病・うつ状態では、通常、成人では1日1回1mgを内服します。
なお、忍容性に問題なく、十分に効果が認められ場合に限り、1日2mgに増量することができるとなっています。
薬物動態
1日1回内服した際は血液中の濃度は約6時間で最高濃度に達し、約53~67時間後に血液中の濃度は半分に下がります(図10)。
図10 レキサルティ1回内服時の血中濃度の推移
毎日内服すると、血液中の濃度は約4~5時間で最高濃度に達し、1mg内服では約92時間後に、4mg内服では約71時間後に血液中の濃度は半分に下がります(図11)。
図11 レキサルティを毎日内服したときの血中濃度の推移
食事による影響はありません。
肝臓で主としてCYP3A4、CYP2D6によってS原子の酸化反応を受けて、主要代謝産物DM-3411が生成されます(図12)。
図12 ブレクスピプラゾール(レキサルティ)の肝臓での代謝
副作用
重大な副作用に以下が挙げられています。
- 悪性症候群(頻度不明)
- 遅発性ジスキネジア(頻度不明)
- 麻痺性イレウス(頻度不明)
- 横紋筋融解症(頻度不明)
- 高血糖(0.1%)、糖尿病性ケトアシドーシス(頻度不明)、糖尿病性昏睡(頻度不明)
- 痙攣(0.1%)
- 無顆粒球症(0.1%)、白血球減少(0.1%)
- 肺塞栓症(0.1%)、深部静脈血栓症(0.1%)
承認時における調査症例1,520例中547例(36.0%)に副作用発現を認め、主な副作用は以下でした(図13)。
- アカシジア(5.1%)
- 頭痛(4.5%)
- 不眠(4.5%)
- 体重増加(3.1%)
- 振戦(2.8%)
- 傾眠(2.0%)
- 激越(1.8%)
- 悪心(1.8%)
- 便秘(1.8%)
図13 ブレクスピプラゾール(レキサルティ)の主な副作用
文献
- 1) Stahl SM. : Mechanism of action of brexpiprazole: comparison with aripiprazole. CNS Spectr, 21 : 1-6, 2016.
- 2) Frampton JE. : Brexpiprazole: A Review in Schizophrenia. Drugs, 79 : 189-200, 2019.
- 3) Antoun Reyad A, Girgis E, et al. : Efficacy and safety of brexpiprazole in acute management of psychiatric disorders: a meta-analysis of randomized controlled trials. Int Clin Psychopharmacol, 35 : 119-128, 2020.
- 4) Ishigooka J, et al. : Efficacy and safety of brexpiprazole for the treatment of acute schizophrenia in Japan: A 6-week, randomized, double-blind, placebo-controlled study. Psychiatry Clin Neurosci, 72 : 692-700, 2018.
- 5) Kato M, et al. Adjunctive brexpiprazole 1 mg and 2 mg daily for Japanese patients with major depressive disorder following inadequate response to antidepressants: a phase 2/3, randomized, double-blind (BLESS) study. Psychiatry Clin Neurosci, 2023.
- 6) Nuñez NA, et al. : Augmentation strategies for treatment resistant major depression: A systematic review and network meta-analysis. J Affect Disord, 302 : 385-400, 2022.
- 7) Lee D, et al. : Brexpiprazole for the Treatment of Agitation in Alzheimer Dementia: A Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol, 80 : 1307-1316, 2023.
- 8) Pillinger T, et al. : Comparative effects of 18 antipsychotics on metabolic function in patients with schizophrenia, predictors of metabolic dysregulation, and association with psychopathology: a systematic review and network meta-analysis. Lancet Psychiatry, 7 : 64-77, 2020.
- 9) Zazu L, et al. : Do cariprazine and brexpiprazole cause impulse control symptoms? A case/non-case study. Eur Neuropsychopharmacol, 50 : 107-111, 2021.
- 頭が働かない
- 寝つきが悪い
- やる気が起きない
- 不安で落ち着かない
- 朝寝坊が多い
- 人の視線が気になる
- 職場に行くと体調が悪くなる
- 電車やバスに乗ると息苦しくなる
- うつ病
- 強迫性障害
- 頭痛
- 睡眠障害
- 社会不安障害
- PMDD(月経前不快気分障害)
- パニック障害
- 適応障害
- 過敏性腸症候群
- 心身症
- 心的外傷後ストレス障害
- 身体表現性障害
- 発達障害
- ADHD(注意欠如・多動症)
- 気象病・天気痛
- テクノストレス
- バーンアウト症候群
- ペットロス(症候群)
- 更年期障害
- 自律神経失調症