公開日 2025.07.14
開発経緯
シロシビンは、マジックマッシュルームと呼ばれるキノコ類の成分の活性物質です。
マジックマッシュルームなどのキノコ類はサイケデリックと呼ばれ、米国ではカウンターカルチャーの動きと連動し、否定的に捉えられ、その薬剤としての開発は中止となっていました1)。
しかし、2000年代に入り、がん患者さんの疼痛緩和への効果等から新たに着目されるようになりました。
さらに、近年、精神医学領域において、強力かつ即効性のある抗うつ作用が確認され、抗うつ剤のとしての開発がすすんでいます。
薬剤のジャンルとしては精神展開剤と呼ばれています。
こうような経緯の中、シロシビンは2023年にオーストラリアでうつ病とPTSD(心的外傷後ストレス障害)に対する保険承認を取得しました。
米国、欧州では治験が進行しています。
日本では今後、基礎研究が行われていく予定です2)。
効果
Gukasyanらの研究では、シロシビンの2回内服で、1週間で抑うつ症状の改善がみられ、効果は12カ月持続したことが報告されています3)(図1)。
図1 シロシビンの治療効果①
治療抵抗性うつ病患者に対するシロシビンを投与した研究では、25mg内服群の3週間後の寛解率は29%でした4)、(図2)。
図2 シロシビンの治療効果②
1剤目の抗うつ薬が無効で、2剤目の抗うつ剤に切り替えた際の寛解率は、約20%とされており5)、抗うつ薬の効果を上回る結果でした。
作用
シロシビンはセロトニンの受容体に作用します。
そのため、セロトニンと似た化学構造式を有します(図3)。
図3 セロトニンとシロシビンの構造
シロシビンはシロシンに代謝された後、脳のシナプス後ニューロンのセロトニン5HT-2A受容体作動薬(アゴニスト)として作用します1)、(図4)。
図4 シロシビンの作業機序
セロトニン5HT-2A受容体作動作用は、下流で、AMPA、NMDA受容体に対するグルタミン酸作動性の調節、脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現増加、ドパミン作動性活動の増加、TNFαおよびインターロイキン6(IL-6)の放出抑制を引き起こし、抗うつ作用として作用することが示唆されています6)、(図5)。
図5 シロシビンの作業機序②
副作用
急性の副作用では以下が多いと報告されています7)。
- 嘔気
- めまい
- 血圧上昇
- 不安
- 頭痛
図6 シロシビンの副作用
参考
- 1) Lowe H, et al.: The Therapeutic Potential of Psilocybin. Molecules, 26: 2948, 2021,
- 2) 大塚製薬. ニュースリリース. 学校法人慶應義塾と共同研究契約を締結 ‐精神展開剤の社会実装に向けた基盤整備のための産学連携-. 2025
- 3) Gukasyan N, et al.: Efficacy and safety of psilocybin-assisted treatment for major depressive disorder: Prospective 12-month follow-up. J Psychopharmacol, 36: 151-158, 2022.
- 4) Goodwin GM, et al.: Single-Dose Psilocybin for a Treatment-Resistant Episode of Major Depression. N Engl J Med, 387: 1637-1648, 2022.
- 5) Rush AJ, et al.: What to Expect When Switching to a Second Antidepressant Medication Following an Ineffective Initial SSRI: A Report From the Randomized Clinical STAR*D Study. J Clin Psychiatry, 81: 19m12949, 2020.
- 6) Ling S, et al.: Molecular Mechanisms of Psilocybin and Implications for the Treatment of Depression. CNS Drugs, 36: 17-30, 2022.
- 7) Yerubandi A, et al.: Acute Adverse Effects of Therapeutic Doses of Psilocybin: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Netw Open, 7: e245960, 2024.
- 頭が働かない
- 寝つきが悪い
- やる気が起きない
- 不安で落ち着かない
- 朝寝坊が多い
- 人の視線が気になる
- 職場に行くと体調が悪くなる
- 電車やバスに乗ると息苦しくなる
- うつ病
- 強迫性障害
- 頭痛
- 睡眠障害
- 社会不安障害
- PMDD(月経前不快気分障害)
- パニック障害
- 適応障害
- 過敏性腸症候群
- 心身症
- 心的外傷後ストレス障害
- 身体表現性障害
- 発達障害
- ADHD(注意欠如・多動症)
- 気象病・天気痛
- テクノストレス
- バーンアウト症候群
- ペットロス(症候群)
- 更年期障害
- 自律神経失調症