公開日 2023.12.27
作用・特徴
柴胡加竜骨牡蛎湯は比較的体力がある人のイライラや不眠に使用されます。
高血圧や陰萎に用いられることもあります(図1)。
図1 柴胡加竜骨牡蛎湯の作用と効果
近年、脳卒中後うつ病に対する単剤治療及び抗うつ薬との併用の有効性が示唆されています1)。
加齢男性性腺機能低下(男性更年期障害)への有効性も示唆されています2)。
また、てんかんに対し保険適応を有する漢方薬で、まだ抗てんかん薬がなかった江戸時代にはてんかんの治療に用いられていました。
現在でも、有効性が報告されており3)、てんかんとてんかんを有する当事者のメンタル不調に効果を発揮することがあります。
使用目標(証)は、比較的体力のある人で、精神不安、不眠、いらいらなどの精神神経症状があり、胸脇苦満のある場合に用います(図2)。
- 1)頭痛、頭重、肩こりなどを伴う場合
- 2)臍傍に腹部大動脈の拍動の亢進を認める場合
とされています。
図2 柴胡加竜骨牡蛎湯の東洋医学的使用目標
柴胡加竜骨牡蛎湯は前頭前野のグルココルチコイド受容体の減少を是正し、視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の機能障害を改善することが報告されており4)、これらの薬理作用を介し、不安・うつ症状等の改善につながっていると考えられています(図3)。
図3 柴胡加竜骨牡蛎湯のストレスによる精神症状の改善効果メカニズム
柴胡加竜骨牡蛎湯は以下の生薬から構成されています(図4)。
- 柴胡
- 半夏
- 桂皮
- 茯苓
- 黄芩
- 大棗
- 人参
- 牡蛎
- 竜骨
- 生姜
図4 柴胡加竜骨牡蛎湯の構成生薬
剤型
医薬品のツムラの漢方薬(12番)は1包顆粒2.5gとなっています(図5)。
図5 柴胡加竜骨牡蛎湯の剤型(ツムラ医療用)
効能・効果
比較的体力があり、心悸亢進、不眠、いらだち等の精神症状のあるものの次の諸症がみられます。
- 高血圧
- 動脈硬化症
- 慢性腎臓病
- 神経衰弱症
- 神経性心悸亢進症
- てんかん
- ヒステリー
- 小児夜啼症
- 陰萎
用法・用量[ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯(医療用)]
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に内服します。
なお、年齢、体重、症状により適宜増減します。
副作用
重大な副作用として以下が挙げられています。
- 間質性肺炎(頻度不明)
- 肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)
その他の副作用として以下が挙げられています(頻度不明)。
- 発疹
- 発赤
- そう痒
- 蕁麻疹
- 胃部不快感
参考
- 1) Kwon CY, et al. : Efficacy and safety of Sihogayonggolmoryeo-tang (Saikokaryukotsuboreito, Chai-Hu-Jia-Long-Gu-Mu-Li-Tang) for post-stroke depression: A systematic review and meta-analysis. Sci Rep, 9 : 14536, 2019.
- 2) 高橋 薫, 他.:柴胡加竜骨牡蛎湯の症例で加齢男性性腺機能低下(LOH)症候群を考える. 東方医学, 36 : 43-54, 2020.
- 3) 栗原 英二. : 小児てんかんに対する柴胡加竜骨牡蛎湯の有効性についての検討~その4~脳波異常改善目的での使用(2). 脳と発達, 49 : 443, 2017.
- 4) 田平 武. : 柴胡加竜骨牡蛎湯の薬理作用. 脳21, 4 : 326-331, 2015.
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