公開日 2025.6.12
作用・特徴
大建中湯(ダイケンチュウトウ)は腹痛や腹部膨満、便秘に効果があり、使用されています(図1)。
図1 大建中湯の効果
大建中湯は慢性便秘への有効性が報告されており1)、便秘症にも多く使用されます。
術後イレウスの改善効果も報告されています2)。
大建中湯の構成生薬であるオタネニンジンの成分であるジンセノサイドRg1は、動物モデルで抗うつ作用があることはわかっています3)。
そのため、精神科・心療内科領域では、うつ症状を伴う便秘症の患者さんには良い適応となります。
大建中湯はTRPV1(カチオンチャネルVサブファミリー1)、ムスカリン受容体、セロトニン5-HT3受容体・5-HT4受容体等を介して、腸管運動を促進するとされています3)、4)、(図2)。
図2 大建中湯の腸管運動促進の作用機序
使用目標(証)は、体力が低下した人で四肢や腹部が冷え、腹痛、腹部膨満、鼓腸のある場合に用いる。
- 腹壁がうすく軟弱無力で腸の蠕動不安を認める場合
- 冷えにより症状の悪化する場合
- 開腹術後の腸管通過障害に伴う腹痛、腹部膨満感
図3 大建中湯の東洋医学的使用目標
大建中湯は以下の生薬から構成されています(図4)。
- 乾姜(カンキョウ)
- 人参(ニンジン)
- 山椒(サンショウ)
図4 大建中湯の構成生薬
剤型
医薬品のツムラの漢方薬(100番)は1包顆粒2.5gとなっています(図5)。
図5 大建中湯の剤型(ツムラ医療用)
効能・効果
効能・効果は以下となっています。
- 腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの
用法・用量[ツムラ大建中湯(医療用)]
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に内服する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減するとなっています。
副作用
頻度は不明ながら以下が挙げられています。
重大な副作用
- 間質性肺炎
- 肝機能障害、黄疸
その他の副作用
- 過敏症:発疹、瘙痒等
- 消化器:胃部不快感、悪心、嘔吐、腹部膨満、腹痛、下痢等
参考
- 1) Manabe N, et al.: Daikenchuto significantly improves stool consistency and lower gastrointestinal symptoms in patients with chronic constipation. JGH Open, 7: 182-189, 2023.
- 2) Kono T, et al.: Daikenchuto accelerates the recovery from prolonged postoperative ileus after open abdominal surgery: a subgroup analysis of three randomized controlled trials. Surg Today, 49: 704-711, 2019.
- 3) Wang YT, et al.: Efficacy of ginsenoside Rg1 on rodent models of depression: A systematic review and meta-analysis. Psychopharmacology (Berl), 242: 1137-1155, 2025.
- 4) Kikuchi D, et al.: Intragastric Dai-Kenchu-To, a Japanese herbal medicine, stimulates colonic motility via transient receptor potential cation channel subfamily V member 1 in dogs. Tohoku J Exp Med, 230: 197-204, 2013.
- 5) Tokita Y, et al.: The pharmacological effects of Daikenchuto, a traditional herbal medicine, on delayed gastrointestinal transit in rat postoperative ileus. J Pharmacol Sci, 104: 303-10, 2007.
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